- 欧州中央銀行(ECB)は6月9日、資産購入プログラム(APP)を6月末で終了させるとともに、7月と9月に利上げを実施するとの意向を発表した。金融政策が正常化に向かうことは概ね市場の予想通りだったが、インフレ高進に大きな減速が見られない限り、9月における50bpsの利上げが示唆されたことは市場を驚かせた。
- 一方、欧州周縁国債券のスプレッド拡大のバックストップ策については明確な見解が示されなかった。足元でイタリア国債のスプレッドは比較的落ち着いた動きを示している。しかし、十分なバックストップ策が講じられなければ、ECBの金融政策正常化が制限される可能性があるほか、欧州の分断リスクも再燃し得るだろう。
- 多くの不確実性に晒された欧州経済が、ゼロ金利から脱却し、それを大きく上回る政策金利に耐えられるかは未知数である。ECBが発表した2023年のGDP成長率予想2.1%は非常に楽観的であり、PGIMフィクスト・インカムでは1.3%と予想している。よって、インフレを抑制すべく従来予想よりも速いペースでの利上げが見込まれるが、今後1年間の政策金利の水準は足元の市場の織り込みを大幅に下回る1%近辺に留まると考えている。
- 今回のタカ派的な発表を受けて欧州債券市場ではイールドカーブ全域にわたって利回りが上昇し、ロシアのウクライナ侵攻開始時点からの利回り上昇幅では、ドイツ2年国債が米国2年国債を上回った。ユーロ圏の成長見通しは米国よりも厳しく、市場のように急速な利上げを織り込むには、我々のユーロ圏に対する見通しはより悲観的である。よって、ドイツ国債の利回りは中期的に低下する可能性があり、投資妙味があるとPGIMフィクスト・インカムは考えている。
- 経済成長が減速する見通しの中でドイツ国債利回りが上昇したことで、欧州では株式市場が下落し、信用スプレッドも拡大した。2022年に入り、欧州ハイイールド債のスプレッドは米国ハイイールド債を上回って推移していたが、今回のECBの発表を受けて米欧のスプレッド較差は更に拡大した。
- 市場のユーロ圏の経済に対する楽観的な見通しと過度に積極的な利上げの織り込みを背景にドイツ国債には投資妙味があると考えられる一方、欧州周縁国債、社債、その他リスク資産は引き続き不安定に推移することが予想される。インフレ高進、成長率の低下、金融引き締めが相俟って、投資家には慎重な姿勢が求められる。
続きはレポートをご覧ください。
留意事項
本資料に記載の内容は、PGIM フィクスト・インカムが作成した”The ECB Bangs the Inflation Drum”をPGIMジャパン株式会社が要約したものです。PGIMフィクスト・インカムは、米国SEC の登録投資顧問会社であるPGIM インクのパブリック債券運用部門です。
本資料は、プロの投資家を対象としたものです。すべての投資にはリスクが伴い、当初元本を上回る損失が生じる可能性があります。
本資料は、当グループの資産運用ビジネスに関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘又は販売を目的としたものではありません。また、本案内に記載された内容等については今後変更されることもあります。
本資料に記載されている市場動向等は現時点での見解であり、事前の通知なしに変更されることがあります。また、その結果の確実性を表明するものではなく、将来の市場環境の変動等を保証するものでもありません。
本資料で言及されている個別銘柄は例示のみを目的とするものであり、特定の個別銘柄への投資を推奨するものではありません。
本資料に記載されている市場関連データ及び情報等は信頼できると判断した各種情報源から入手したものですが、その情報の正確性、確実性について当社が保証するものではありません。過去の運用実績は必ずしも将来の運用成果等を保証するものではありません。
本資料は法務、会計、税務上のアドバイスあるいは投資推奨等を行うために作成されたものではありません。
当社による事前承諾なしに、本資料の一部または全部を複製することは堅くお断り致します。
“Prudential”、“PGIM”、それぞれのロゴおよびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクおよびその関連会社のサービスマークであり、多数の国・地域で登録されています。PGIMジャパン株式会社は、世界最大級の金融サービス機関プルデンシャル・ファイナンシャルの一員であり、英国プルーデンシャル社とはなんら関係がありません。
PGIMジャパン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第392号
加入協会 一般社団法人日本投資顧問業協会、 一般社団法人投資信託協会
PGIMJ90937