- 欧州中央銀行(ECB)は7月21日に開催された理事会で、市場予想を大幅に上回る50bpsの利上げを実施し、一気にマイナス金利から脱却した。今回の決定は、インフレ期待と名目賃金の上昇率をECBが掲げる2%程度という目標に抑えたいとの意向が反映されている。
- 足元で深刻さが増すユーロ圏のエネルギー危機を背景に、ECBは利上げを急いだ可能性がある。また、金融引き締めに伴う域内較差の是正を目的とした「伝達保護措置(TPI)」が全会一致で可決されたことも大幅な利上げを促した。とは言え、ラガルド総裁は、「今回の利上げペースの加速によって最終的な政策金利の目標水準が変わることはなく、徐々に中立水準に向かっていく」と説明した。但し、その中立金利の水準をECBは明示していない。
- ユーロ圏の成長見通しが厳しいものであることを踏まえ、PGIMフィクスト・インカムはECBの利上げ余地は限られるとの見方を維持している。中国の景気減速やエネルギー価格の高騰が更なる下押し圧力となる場合、今回の利上げサイクルは1%未満の水準で一旦打ち止めとなる可能性がある。仮に1%を十分に上回る水準まで利上げした場合、エネルギー不足が実体経済に影響を及ぼすにつれ、利下げを余儀なくされる可能性がある。
- 米国国債市場とは対照的に、ドイツ2年国債と10年国債の利回り較差は現時点で57bpsの順イールドであり、今後もECBは徐々に利上げを進めるだろうという市場の見方が表れている。一方、今回の決定を受けてイールドカーブが10bps程度フラット化したことから、市場心理が変化した可能性はある。また、ロシアからのエネルギー供給や欧州の経済成長を巡る不透明感が後退し、ECBが少なくとも50bps~100bpsの追加利上げを行えば、景気や利上げサイクルの終盤で見られる典型的なイールドカーブのフラット化が発生すると見られる。
- 6月15日に開催された緊急理事会の中でECBは「欧州分断リスクの再燃に対処する」ことを明言していたが、引き続きTPIの条件やプロセスは曖昧な内容に留まった。ドイツ国債に対するイタリア国債のスプレッドは今回の発表直後に拡大し、その後理事会前の水準に回帰した一方、ギリシャ国債のスプレッドは最終的に10bps以上拡大した。
- こうした市場の動きに加えて、同じく曖昧な内容で十分な効果が得られなかった証券市場プログラム(SMP)を巡る過去の経験から、現時点で市場参加者は概してTPIに対する期待感を持っていないことが伺える。ECBが更なる行動力を示さない限り、欧州周縁国債の支援材料にはならないと見られ、短期的には南欧諸国のドイツ国債に対するスプレッドは、ECBの本気度を試すように、拡大する可能性がある。
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