米連邦準備制度理事会(FRB)による今般の利上げサイクルにおける最大の特徴は、金融引締めにも拘らず底堅い米国経済と、それに伴う米国資産のアウトパフォームである。今サイクルでは米国経済の金利感応度の低下が見られており、金利上昇と利益率の低下圧力に直面する中でも米国企業が業績の底堅さを維持しているのは、この金利感応度の低下が寄与している可能性がある。そうした中、本レポートでは、歴史的に金融引締め政策が信用スプレッドに及ぼしてきた影響、および今後の投資機会について考察したい。
- 金融引締めの効果が実体経済に及ぶには不透明で長い時間差が伴う一方、リスク資産価格には予想されるマクロ経済の軟化が素早く織り込まれる。過去のサイクルを振り返ると、金融引締めが実施されると、金利カーブの形状が逆イールド化し、企業収益の悪化が予見される。企業利益の悪化が深まるにつれて、典型的に信用スプレッドは拡大することになる。また、信用スプレッドの拡大がピークを迎えるには時間を要するが、通常は企業収益が最も悪化した時点と一致している。
- 足元、米国では2年債と10年債の逆イールドが発生してから16ヵ月が経過した。そこで、逆イールドの発生時点から信用スプレッドがピークを迎えるまでに要する時間に目を向けると、過去平均は26ヵ月となっている。しかし、サイクルによって大きなばらつきがあり、高インフレ期(1970-80年代など)には相対的に長い期間を要している。
- 長期的に高い債券利回りが維持される見通しを背景に、今後の投資機会は高い利回りを掴むことにあると考えられる。今サイクルにおいて債券価格は大きく上下に変動したが、戦略的な魅力は債券価格の上昇によってもたらされるわけではない。むしろ、この新たな高利回りとキャリーが魅力的な投資機会を提供している。こうしたリターン特性は、質の高いスプレッド・プロダクトを選好し、それぞれの債券セクターの中で相対価値に基づく銘柄選択を通じて超過収益の獲得を狙うPGIMフィクスト・インカムの投資スタイルに合致する。
- 世界的な成長鈍化と、高いながらも緩やかに低下するインフレという、PGIMフィクスト・インカムが基本シナリオに据える「ウィークフレーション」はスプレッドにとって建設的なシナリオであり、米国の投資適格債、ハイイールド債ともに、長期平均付近でのレンジ推移を見込んでいる。また、PGIMフィクスト・インカムでは、「長期にわたる高い金利水準」がレバレッジの高い発行体の重石になると想定していることから、ハイイールド債よりも投資適格債を選好している。過度に信用リスクを取ることなく、相対的に経済見通しが安定している米国の資産に焦点を当てることで、様々な投資目的を達成できると考えている。
留意事項
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