流動性を解き放つ:ローワー・ミドル・マーケット・プライベート・エクイティの分配優位性
プライベート・エクイティが低金利環境下で繁栄を謳歌し、COVID-19後の楽観論が入り混じった時代は終わった。経済の先行きに対する見方が分かれ、不確実性が長期化する時代に我々は直面している。
2020年代はグローバル・サプライチェーンの混乱から始まり、その後製造業では米国の消費者に安定した供給を提供するため、サプライチェーンの多様化を進めてきた。その背景には、潜在的な人件費や輸送費の削減、サプライチェーンの弾力性の向上、税制や関税上のメリットがある。この構造的トレンドが、現在、米国・メキシコ国境の両側において物流施設セクターに対する魅力的な投資機会をもたらしている。
国境沿いの物流施設の需要増加は、米国の貿易政策に関する不確実性の高まりと連動して生じているが、この不確実性が当面解消される見込みはない。関税引き上げや北米の貿易協定の再交渉が迫っていることから、国境沿いの物流施設セクターに対する我々の強気スタンスにはリスクもあるが、一方でたとえ関税が引き上げられたとしても、米国市場向けの供給・製造拠点をメキシコに置く利点のほうがはるかに大きいため製造業業者は今後も現状の方針を継続すると考えられる。このリスクを軽減する方法の一つとしては、国境両側への投資することが考えられる。
数十年に渡って対米輸出が拡大していることから、メキシコの物流施設セクターへの機関投資家の投資事例は十分に蓄積されている。これは企業が中国への製造依存度を引き下げるために、生産の「ニアショアリング」を進めていることと直接結びついている。2016年以降、米国の国別輸入額に占める中国が失ったシェアの最も大きな割合をメキシコが獲得しており、その割合は30%に上る。
メキシコが進出先として好ましいのは、安い労働力を確保しやすく、数十年にわたる投資によりサプライチェーンが確立されているからである。関税のリスクは、メキシコ・ペソの下落によって一部相殺され、同国での事業コストをさらに低下させている。
その結果、メキシコの物流施設物件への需要が急増したが、供給が追い付かず、賃料が急上昇している。以下に示すように、メキシコ全体での賃料上昇率は3年連続で15%を超えている。15%という高い賃料上昇が今後も継続する可能性は低いものの、2020年代を通じて高水準の賃料上昇が続くと予想される。
メキシコの物流施設物件賃料は米ドル建てでペソの為替リスクは無く、さらに重要な点は、通常賃料支払い能力については、信用リスクの低い多国籍テナントの保証があるということである。よって、米国に投資する場合と比較すると、追加的なカントリーリスクはあるものの、為替リスクとテナントリスクは軽減されている。
我々の見積もりでは、現在のメキシコの物流施設物件の投資価値はそのカントリーリスクを補って余りあるもので、キャップレートは米国平均を200bps上回り、短期的な賃料上昇の見通しも良好である。そのため、既存物件への魅力的な投資機会のみならず、より高い収益が期待できる新規開発案件の機会も存在する。
米国国境市場への投資事例の蓄積はまだ十二分に深くはないが、エルパソ(フアレス近郊)、サンディエゴ近郊のオタイメサ(ティファナ近郊)、ラレド(ヌエボラレド近郊で、モンテレイ周辺のメキシコ北部最大の工業集積地への良アクセス)といった市場に早期参入することで潜在的なメリットを享受できる可能性がある。
2020年代に入るまでは、国境周辺における倉庫や部品組み立てのニーズはほとんどなかった。しかし、少なくとも二つの理由によって状況が変わった。
物流施設物件のデータは米国国境市場への投資の意義を裏付けている。過去2年間で、エルパソとラレドの市場を合わせると、米国の物流施設向け賃貸契約全体の5%以上を占めており、同市場シェアが過去平均1%程度だったのに対して大幅な増加となっている。
2019年以降、この両市場における物件投資リターンも急上昇しており、5年間の平均年間リターンは全国平均の15%に対して22%を記録している。過去1年、キャップレートの拡大により全国的な物流施設のトータルリターンが4%下落したのに対して、エルパソとラレドの複合リターンは1%上昇し、より強い回復力を示した。1
1.NCREIFのデータに基づく全国平均値は15%
米国国境市場は、足元の超過収益にもかかわらず、依然として割安な価格水準にある。エルパソとラレドのキャップレートは全国平均から約100bps高く、メキシコとの貿易量のさらなる成長を背景に、価格上昇余地があるにもかかわらず、既に高いリターンを提供していることを意味している。キャップレート・プレミアムの一部は、国境市場の流動性の低さや長期的なパフォーマンスの実証が十分ではないことで正当化されるが、我々は、現在、これらの市場は魅力的なリスク調整後リターンを提供していると考えている。
進化するグローバル・サプライチェーン、労働および輸送コストの削減、サプライチェーン回復力の向上、そして税制や関税上のメリットが交差することで、メキシコと米国の国境の両側に魅力的な物流施設セクターへの投資機会が生まれている。
プライベート・エクイティが低金利環境下で繁栄を謳歌し、COVID-19後の楽観論が入り混じった時代は終わった。経済の先行きに対する見方が分かれ、不確実性が長期化する時代に我々は直面している。
保険会社は、新たな市場パラダイムの確立において重要な役割を担っている。プライベート市場の成熟は、グローバルな投資環境に大きな変化をもたらした。プライベート市場が急速な成長を遂げている一方、上場株式市場では時価総額の大きな少数の企業への集中がさらに進んでいる。
プライベート・クレジット市場は急速に拡大し、機関投資家のポートフォリオにおいて、その重要性は一段と高まっている。
留意事項 1
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