今年の初めにリリースしたレポートにおいて、昨年末に欧州連合(EU)と中国との間で合意された包括的投資協定(CAI)が欧州、とりわけドイツにとって多面的な含意があることを検証した。米国にとっては非常に不本意なことに、CAIによって世界第2位と第3位の経済圏の結び付きが強化された。同協定の発効は2022年となる見込みだが、欧州各国が引き続き新型コロナウイルスの第2波に悪戦苦闘していること、およびワクチンの普及には時間を要することを考えると、同協定の重要性は既に明白なものとなっている。広範なワクチン接種プログラムを通じて集団免疫が確保されるまでは、ソーシャルディスタンス政策による制約とそれに伴う経済的影響が今後も欧州にとって大きな足枷となり、特にサービス・セクターには大きな皺寄せがあるだろう。しかし、欧州の第4四半期の国内総生産(GDP)速報値は意外にも予想を上回り、好調な製造業部門がこれを牽引した可能性がある。中国における持続的な景気回復は、欧州にとって非常に重要な外需の源泉となっており、欧州各国で実施されている厳しい都市封鎖に伴う低調な国内需要を相殺するために不可欠なものとなっている。こうしたプラス要素は、欧州における大規模な金融・財政支援策とも相俟って、ドイツのような輸出依存型の国を中心に、欧州のより広い範囲で、経済の冷え込みという厳しい冬を乗り切るための支援材料となるであろう。
中国経済の回復は、ドイツおよびEUにとって重要である
世界第3位の経済圏であるEUは、米国と比べても非常に開放された市場であり、米国のGDPに占める輸出の比率が10%であるのに対し、欧州では30%近くを占めている。EU域内では、ドイツが最大かつ最も開放された市場でGDPの50%近くを輸出が占めており、域内の他国と貿易面で大きな繋がりを持っている。こうした中、2016年には中国が数量ベースでドイツ最大の貿易相手国になるという節目を迎え、それ以降は貿易量が拡大し続けている。2019年の貿易内訳によると、ドイツは中国に対して、とりわけ機械製品や輸送機器などの資本集約型の製品を中心に輸出しており、こうした製品を製造するためのサプライチェーン網が既に欧州にわたって張り巡らされている。こうしたことからも、コロナ禍からの中国経済の回復は、欧州全域にとって重要な意味を持っている。
中国経済の回復は加速している
中国は、2020年初めに発生した新型コロナウイルスの更なる感染拡大の抑制に成功しており、鉱工業生産、製造業PMI、固定資産投資などの経済指標は、同年末までに2019年第4四半期の水準にまで回復した。足元では、旧正月による一時的な影響が鉱工業生産の減速に反映されている可能性があるが、昨年来続く回復基調は維持されており、これは中国経済のモメンタム加速を示唆するものである。
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