- 市場の予想通り、欧州中央銀行(ECB)は12月15日に開催された理事会で50bpsの利上げを決定した。一方、ラガルド総裁は市場予想を上回るタカ派姿勢を示し、今後も利上げを継続する意向であること、政策金利の最終到達点は市場が織り込む水準を大幅に上回る見込みであること、およびインフレ目標の達成には長期に亘り制約的な金利水準を維持する必要があることを強調した。但し、利上げが経済指標次第であることと、今後の会合で50bpsの連続利上げを行うという今回示されたフォワードガイダンスの間には乖離があるように思われる。全体として、こうした急激な姿勢の変化は、今後軟化していく経済活動と相反して高止まりするインフレ見通しへの確信度の高さを示唆している。
- また、量的引き締めに関する発表も市場を驚かせた。ECBはバランスシート縮小を2023年3月に開始し、4ヵ月に亘って150億ユーロ相当の満期を迎える債券の再投資を行わないことを発表した。しかし、それ以降の詳細な計画は示されず不透明感が高まっている。ECBの急激なタカ派姿勢やこうした不透明感の高まりは、ユーロ圏の金融市場の安定性に対してリスクをもたらし得る。市場が大きく混乱した場合には、短期間での政策転換も余儀なくされ、結果としてECBは信頼性を損なう可能性がある。
- 今回の発表を受け、ドイツ2年債利回りは一時30bps程度上昇し、世界金融危機以来となる水準に達した。また、欧州周縁国債のスプレッドも大幅に拡大し、イタリアとドイツの10年債の利回り較差は2022年10月以降で最もワイド化した。この他、信用スプレッドも拡大し、株式市場も急落した。一方、ユーロが対ドルで弱含んだことは興味深い。これは金利差がもたらすプラス材料を、金融環境の引き締まりによるユーロ建資産の高いリスクプレミアムが打ち消した格好である。
- ECBがより長期に亘り高い金利水準を維持する意向を示したことにより、既に経済成長に減速感が見られる中で、債券のリスクプレミアムの上昇が示唆される。また、量的引き締めは各国政府が財政政策を拡大し国債を増発する中で実施されるため、金利上昇も相俟って欧州の分断リスクと債務の持続可能性を巡る問題が再燃する可能性がある。今回の政策発表には多くの疑問が残されており、今後の量的引き締めをはじめとする、金融政策の不透明感は追加的なリスクプレミアムをもたらし得る。
- 欧州ハイイールド債は景気後退リスクへの感応度が高いため、投資家がリスクに対して十分なリターンを得るためには、より大きなスプレッド拡大が求められる。年末年始を控えて市場の流動性が低下する中でリスク資産が更に売り込まれることが懸念されることから、更にスプレッドが拡大した場合、現段階では高リスクのハイイールド債よりも投資適格社債に投資機会があるとPGIMフィクスト・インカムは見ている。
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