- 欧州中央銀行(ECB)の金融引き締めが後手に回ったことでユーロ圏のインフレ率が数十年ぶりの高水準に達したとの批判があるが、ECBに先んじて利上げを開始した国であっても必ずしもインフレは抑制されていない。また、政策決定に際して、ECBは現在のインフレ高進を適切に予測できなかった不完全な経済モデルに依拠し過ぎたとの批判もあるが、2021年7-9月時点ではあらゆる予想媒体もインフレ率が2%を下回って推移すると予測していた。
- 想定外のインフレ高進をもたらした2大イベントが、2021年夏以降に発生した。1つ目は、新型コロナウイルスのワクチン接種等が奏功して感染拡大が抑制され、予想を上回る需要回復が見られたことである。そして、2つ目は、ロシアによるウクライナ侵攻を背景としたエネルギー価格の高騰である。
- 足元で、一般家庭の総消費支出に占めるエネルギー支出の割合は約10%となっており、2%の総合インフレ率を維持するためにはエネルギー以外の価格が2%超下落しなくてはならない計算となる。エネルギー価格が高騰する中で2%のインフレ率を達成するために、ECBは経済成長を犠牲にして金融政策の引き締めを余儀なくされた。
- ECBはコロナ禍に対応するための景気刺激策を2021年の夏に打ち切るべきだったとの声もあるが、当時の不確実性を考慮すれば、それは極めて困難であった。また、資産買い入れ額の減額や早期の利上げ開始を検討すべきだったとの批判についても同様である。
- 一方、ユーロ圏のインフレ期待や名目賃金等、想定外のインフレ高進をもたらした要因以外の指標は、2%のインフレ目標と整合的な水準で推移しており、ECBがこれ以上の追加利上げを行えば金融環境が過度に引き締まる可能性があることを示唆している。こうした中、ECBは12月と2月に開催された理事会において、更なる利上げの必要性と3月に量的引き締めを開始する意向を示唆した。
- 例えば、ロシア・ウクライナ紛争の長期化等によって欧州経済がより大きな影響を受ける場合、ECBの更なる金融引き締めが誤った政策となる可能性が高まる。2022年を振り返れば、これまでの引き締めペースはインフレ抑制に適切な水準であったことが様々な経済指標からも示唆されており、ECBは後手に回った金融引き締めの遅れを取り戻そうと躍起になる必要はないとPGIMフィクスト・インカムは考えている。
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