- 欧州中央銀行(ECB)は、10月26日開催の理事会において、インフレ鈍化および景況感の悪化を背景に政策金利の据え置きを決定した。これは、2022年の夏に利上げサイクルを開始して以降初めてとなる。加えて、懸念されたバランスシート政策について、ラガルド総裁はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の再投資を前倒しして終了させることを今回の会合では議論していないと述べた。こうしたことからも、少なくとも2024年末まで再投資を続けるという方針を反故にする可能性は低下したと思われる。
- ラガルド総裁は、ユーロ圏のインフレ率が依然として不快なほど高水準にあることに言及したが、声明文と記者会見ではユーロ圏経済の減速が強調された。とは言え、ラガルド総裁は、利下げについて議論することは「時期尚早」との姿勢を示した。ECBは、コア・インフレ率が数ヵ月にわたって継続的に低下し、賃金上昇も鈍化することを確認した上で、利下げを検討する意向だと思われる。これを踏まえると、最初の利下げは早くとも2024年4-6月期になると考えられる。
- 今回の会合でECBがハト派姿勢に傾いたことは好感されるが、イスラエルとハマスの紛争を背景としたエネルギー価格の上昇や気候変動が食料品価格に及ぼす影響といったインフレの上振れリスクは燻っている。こうしたリスクが顕在化すれば、経済が停滞する中で長期にわたってインフレ率が高止まりする可能性があり、政策金利は2024年に入っても当面は現行水準にとどまると予想される。また、2024年のユーロ圏のGDP成長率について、市場コンセンサスは0.8%と年初来で下方修正され続けているものの、依然として我々の0.5%よりも高い予想を維持している。
- 金融環境のさらなる引き締めは欧州資産の打撃となった可能性がある中、金融市場の観点からも今回の決定は賢明であったと考えられる。経済の弱さとインフレの緩やかな鈍化を背景とした今回の決定を受け、ドイツ国債利回りは低下し、過去数週間にわたって対米ドルで上昇していたユーロも下落した。
- 政策金利の維持は、欧州資産を巡るリスクを必ずしも軽減する訳ではないという点は重要である。ECBがハト派に傾いたとしても、米国の高金利によって金融環境の引き締まりは維持されるほか、新たなエネルギー危機の脅威が浮上している。こうした中、欧州企業の信用スプレッドおよびイタリア国債とドイツ国債の利回り較差が依然としてワイドな水準にあることは何ら驚くべきことではない。
- 加えて、今後もバランスシート政策を巡る動向は、国債増発が続く中では金融市場のリスクとして燻り続ける。米国では、金融引き締めと財政拡大の組合せによってタームプレミアムが上昇したが、ユーロ圏も同様の状況下に置かれている。金利上昇によりユーロ建債券の投資妙味が幾分改善しているが、欧州のリスク資産に対して高い確信を持つには、まだ十分な環境ではないかもしれない。
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