- 市場の予想通り、欧州中央銀行(ECB)は10月27日に開催された理事会で75bpsの利上げを発表した。これに併せて、条件付き長期流動性供給オペレーション(TLTRO)の融資条件の変更、および市中銀行の最低準備金への付利を預金金利に再設定することも発表された。これは、ECBの政策の焦点が、利上げからその効果の実体経済への確実な伝達に転換したことを示唆している。
- 今回の発表を踏まえ、ECBは間もなく利上げサイクルを一旦停止させる可能性があるとPGIMフィクスト・インカムは見ている。ラガルド総裁は更なる利上げを示唆したものの、冬場に向けたユーロ圏のエネルギー事情は不透明であり、利上げを一旦停止することで、これまでの金融引き締めが実体経済に及ぼす影響や追加的な利上げの必要性について評価することができる。ECBは12月の理事会で政策金利を50bps引き上げて預金ファシリティ金利を2.0%とした後で一旦利上げを停止し、インフレが緩和する等の前提条件はあるものの、2023年には3%を下回る水準でピークを打つとPGIMフィクスト・インカムは予想している。
- 今後は、財政政策と金融政策の足並みの乱れがもたらした英国の混乱も教訓にされると考えられる。需要を抑制してインフレを目標水準に回帰させるための金融政策の余地が狭まる中、景気刺激的な財政政策は金融政策の効果を阻害することになる。よって、財政介入が行われるような場合は、「一時的かつ的を絞った、金融政策と整合的なもの」となるべきである。
- ECBは市場機能の改善にも配慮している。TLTROの条件変更を含む諸々の制度変更によって、今後は利用可能な適格担保が増加し、市場の歪みが一部解消されることが期待される。また、ラガルド総裁は、バランスシート縮小を巡る方針について政策理事会で議論することを示唆しており、これが市場機能の改善に寄与する可能性がある。
- 今回の発表を、市場は予想よりもハト派的と受け止めた。ECBが金融引き締め姿勢を緩めるとの見方から、ドイツ国債の利回りは大きく低下してイールドカーブはブル・スティープ化した。その一方で、期待インフレ率は上昇した。また、米欧の金利差拡大が意識されてユーロは対米ドルで下落した。
- 今回の発表は広範なリスク資産にとって追い風となり、欧州周縁国債や社債のスプレッドが縮小したほか、金利に敏感なREITセクターがユーロ圏の主要株価指数の上昇を牽引した。これまでの欧州市場に対する全般的な弱気姿勢や、欧州経済に対する過度な悲観論を考慮すれば、このリスク資産の上昇は継続する可能性がある。しかし、あらゆることは今後のインフレ率や景気の動向、市場機能の改善次第であり、依然として不透明感はある。
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