連邦準備制度理事会(FRB)は、6月10日に開催された会合において、政策金利の誘導目標を0.0%~0.25%に据え置いた上で、完全な景気回復に向けて経済が軌道に乗るまではゼロ金利水準を維持することを改めて表明した。この点について、FRBは昨年12月の発表以来となる「経済見通しのまとめ」を改訂し、連邦市場公開委員会(FOMC)参加者の全員が少なくとも2021年中の政策金利の据え置きを予想し、またFOMC予測の中央値によれば2022年中も政策金利が据え置かれるだろうとの見通しを強調した。経済活動の再開が予想をはるかに上回るペースで進んだ場合、FRBはどう対応するのかという質問に対し、パウエル議長は「金利の引き上げについては、全く考えていない」と返答した。
FRBはまた、同日の会合において資産購入ペースに関しても追加的な指針を示し、「少なくとも現状のペース」で米国債、MBS(住宅ローン担保証券)およびCMBS(商業用不動産ローン担保証券)の購入を続けると言及した。それと同時に、FRBは今春に導入した数多くの信用供与ならびに流動性供給に関する政策を継続させており、中小企業向けメインストリート融資プログラムなど幾つかの追加的な政策を検討している。こうしたプログラムの実効性を高めるため、FRBは今後も必要に応じて政策適用条件を調整していく意向であることをパウエル議長は強調した。これまでのところ、これら政策を通じて必要とされる資金が効果的に供給されており、民間部門の融資再開を下支えしている。
パウエル議長は記者会見で、現在の金融政策は機能していると述べた。しかし、FOMCにおいては、将来導入される可能性がある2つの追加的政策についても議論された。1つは、金利に関する明確なフォワードガイダンス(これについては既にパウエル議長より言及されており、現時点では標準化された政策手段の一部となっている)であり、もう1つはFOMCが政策実施にあたり過去の実例について説明を受けたイールドカーブ・コントロールである。新型コロナウイルスによって2,000-2,200万人が失業すると予測される中、FRBは経済の回復には何年も要するだろうとの予測を示した。パウエル議長は、FRBの目標は経済や労働市場に長期的な影響が及ばないよう積極的に支援することだと強調した。つまり、景気の本格的な回復には何年も要する可能性が高いとパウエル議長は強調する一方で、GDP(国内総生産)、失業率、インフレ率に対するFRBの長期的な見通しは楽観的なものであり、昨年12月に発表された見通しから大きな変更はなかった。
今回の会合でFRBは新たな政策を発表しなかったが、それにもかかわらず債券市場は反発した。これは、会合の内容に対する反応というよりも、むしろFRBの予測に対して反応したものであった。FRBによる確証のない「より長期的」な予測は依然として楽観的なものだが、2022年までという限定された期間を見れば、失業率は大幅な改善が見込めず、また2%のインフレ目標も達成できないと予測されており、これに対応するために2022年のみならずそれ以降もおそらく利上げの必要はないものとFOMC会合参加者の大半は見ている。
これと対照的に、FOMCの前週に発表された非農業部門の雇用者数が力強いものであったことを受け、FRBによる経済および金利見通しが示唆する今後の利回り予測に対して米国債に大きな利回りプレミアムがあることを市場はある程度織り込んでいた。我々は、足元の米国債の上昇により、すべてではないにせよそのプレミアムの一部は調整されると見ている。
米国債が上昇した一方で、クレジット商品および株式市場の反応は薄かった。(編集者注釈:その後に株式市場は大幅に下落し、足元では緩やかに反発している。)いわゆるリスク市場は、既に3月の底値から大幅な回復を見せており、その勢いを維持するためにも、FRBによる新たなあるいは追加的な政策の導入など、明らかに更なる景気刺激策を必要としていた。
この先数カ月にわたって、債券市場はある程度の回復力を維持するものと我々は予想している。米国債は相対的に現在の水準程度のボックス内で推移すると思われる。これにより、米国債は利回りの上昇とイールドカーブのロールダウン効果により、キャッシュを上回るパフォーマンスをあげることができるだろう。足元では低い国債利回りを伴う経済回復が(着実でないにせよ)続き、また継続的に中央銀行から流動性が供給されている。今回の発表に対してリスク市場では失望感が見られるものの、相場を支えるという側面だけでなく、利回りとリターンを追求する投資家の動きを加速させる上でも、こうした要因が最終的には有効であると我々は考えている。株式とクレジット商品は今後もアウトパフォーマンスし続ける可能性が高いと思われるが、今後数カ月のうちには減速することが見込まれ、これによって間違いなく債券と株式の相互的なボラティリティがもたらされるであろう。最後に、多くの産業セクターが新型コロナウイルスだけでなくエネルギー価格の下落によって深刻な影響を受ける中、引き続き銘柄選別が最も重要となるであろうことを認識する必要がある。
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