核融合発電は、環境に有害な高レベル放射性廃棄物などを排出しない安全かつ信頼性の高い発電手段になり得るとして、半世紀以上にわたって注目されてきた。さらに、2022年12月に米ローレンス・リバモア国立研究所が、制御環境下における核融合実験において史上初めて「点火(核融合反応を起こすのに投入したエネルギーを上回るエネルギーの生成)」に成功したと発表したことで、核融合発電に対する投資家の関心は以前にも増して高まっている。一方、これによって脱炭素を巡る問題が間もなく解決するとの見方もあり、従来型の再生可能エネルギーが軽視される懸念も生じている。
こうした中、PGIMフィクスト・インカムは、核融合発電には以下のような多くの課題があり、2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロ(以下「ネットゼロ」)を達成するためには、引き続き従来型の再生可能エネルギーが重要な役割を担うと考えている。これらは、ネットゼロへの貢献だけでなく、環境を重視したポートフォリオに引き続きプラスの効果を与えることが期待できると考える。
核融合発電が抱える課題
核融合とは、軽い原子の原子核同士が融合することでより重い原子核に変わる反応のことで、これに伴って非常に大きなエネルギーが発生する。水素同位体などの地球上に広く存在する物質を利用できることに加え、既存の原子力発電が抱えているメルトダウンの危険性、高レベルの放射性廃棄物、希少物質である濃縮ウランの枯渇といった問題に悩まされることがない点で優れている。一方、以下のような課題がある。
- 史上初めてレーザー設備から投入されたエネルギー量を上回るエネルギーの生成に成功したが、これにはレーザー設備の動力として必要な電力消費量が考慮されていない。全てを含めた総エネルギー量を上回るエネルギーの生成には更に時間を要するとみられる。
- パリ協定に沿ったシナリオでは、今後も世界の電力需要は拡大し、2050年までには現在の2倍以上になると予想されている。一方、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で採択された「産業革命前からの気温上昇を「1・5度」に抑える」との目標を達成するために許容される温室効果ガスの排出量は、現在のペースが続けば10年以内に完全に使い果たされるとの予想もある。こうした時間的な制約がある中、電力需要の大きな割合を短期間のうちに核融合発電から賄うと考えるのは現実的でない。
- 全世界の最終エネルギー消費に占める電力の割合は20%程度であり、依然として化石燃料が大きな割合を占めている。さらなる電化が進まない限り、核融合発電の導入が実現したとしても効果は限定される。その一環として、送配電網拡充への投資も重要であるが、同分野に対する投資は他のエネルギー関連投資に比べて見過ごされている。まずは、最終エネルギー消費に占める電力の割合を高める取り組みへの投資を加速させる必要がある。
- 従来型の再生可能エネルギーは、新規建設に要する期間は平均2年未満にまで短縮されており(国際エネルギー機関IEAの情報に基づく)、発電コストも急速に低下しさらなる低下が見込まれている。したがって、核融合が実用化された場合、従来型の再生可能エネルギーと比較したコスト競争力に欠ける可能性がある。
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