過去数十年間、先進国における長寿化と少子化を背景とした人口の高齢化が人口動態問題の焦点となってきた。一方、新興国でも高齢化が急速に進んでおり、人口動態の転換期が迫っていることは、あまり注目されていない。今後20年ほどで新興国における65歳以上の人口割合が急速に増加すると予想される中、本レポートでは、今後どの新興国が最も人口高齢化の圧力に晒される可能性があるか検証する。
<要旨>
- 2022年、中国において60年ぶりに死亡者数が出生者数を上回ったことが大きな話題となったが、その他の新興国でも、今後20年で65歳以上の人口割合がほぼ倍増すると予測されている。
- 出生率が人口増加に必要な水準を下回れば、人口規模だけでなく労働供給も(移民がなければ)縮小し、生産性の向上がなければ、より少ない労働力人口で現在と同水準の経済成長を維持することは不可能である。また、労働力人口の減少は税収の減少を意味し、より少ない労働力人口でより多くの被扶養人口(子供や高齢者)を支える必要が生じる中、年金制度や医療費、そして最終的には政府予算への圧力が強まる。
- 先進国と比較すれば、新興国は相対的にはより「若い」人口動態であり続けるかも知れないが、国全体の富の蓄積と金融資産が先進国よりも不十分であることを踏まえ、新興国は急速な社会の高齢化を迎えることになる。
- こうした中、どの新興国が最もこうしたリスクに晒されているか検証するために、「被扶養人口の生産年齢人口への依存度の変化」と「各新興国の対GDP比政府債務残高」を変数として分析を行った。この結果、中国に加えて、ブラジルなどが今後大きな圧力に晒される可能性があることが示唆された。サウジアラビアやポーランドなどは、被扶養人口の依存度が大きく高まると予想される一方、現時点における債務比率が相対的に低いことから、社会支出の増大を吸収できる余力があると考えられる。
- また、各新興国の被扶養人口の依存度の変化につき、出生者数の増加(=若年化)と人口の高齢化という2つの要因に区分してその影響度を検証したところ、今後2050年までに全ての新興国で65歳以上の人口が増加すると予想される一方、子供の人口が増加すると予想される新興国は一握りにとどまることが分かった。これらの国は主にサハラ砂漠以南のアフリカに集中しており、中央アジアや南アジアの新興国も一部含まれる。さらに、こうした新興国であっても、子供の人口増加が65歳以上の人口増加を上回ると予想される国は半数足らずである。
- こうした新興国の人口動態は、投資に対しても大きな影響を与える。急速に高齢化が進む新興国は、年金や医療制度の持続可能性を維持し、長期的な投資家からの資金を確保するために、慎重な財政運営や財政改革が必要となる。一方、若年層の大幅な人口増加が見込まれる新興国では、急増する若年層の労働参加を促し、生産性を高め、バランスの取れた経済成長を達成するために、人材育成への投資が必要となる。しかし、特に対GDP比政府債務残高の高い国では財政余力が限られており、こうした国が適切な政策を実施して成長を実現するためにも、今後は公的債権者と国際金融機関の関与が不可欠になるとPGIMフィクスト・インカムは考えている。
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