1月3日に発生したイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害事件に対抗して、イランが米国に対し何らかの反撃を行うことは必至である。(*1) 具体的には、以下のような行動が取られる可能性がある。
- 強硬策:イラク国内・国外の米国関連施設に対する大規模な攻撃を行う。イラン高官は、米軍事施設・米軍関係者に対する攻撃を示唆しており、米国民間人への攻撃は行わないとしているが、戦闘時の民間人への巻き添え被害が起きる可能性はある。この場合、米国からの反撃は激しいものになり、当地域の体制の安定を危うくする可能性がある。
- 穏健策:米国への攻撃の代わりに、サウジアラビアへの攻撃、ホルムズ海峡封鎖などを行う。イラク国内の米国関連施設への小・中規模攻撃を繰り返しつつ、大規模攻撃を画策する。この場合には、サイバー攻撃も含まれる可能性が高い。
- 外交・政治的行動:イランがイラク国内の「西側」部隊を撤退させるべく、イラク政府に対し圧力をかける。ウラン濃縮を継続する。
長期的な視点に立てば、当地域の危機が世界的な危機に発展するかどうかが問題となる。「何か重大な」ことが起こると世界が予想・認識する期間が長期化すればするほど、世界経済に悪影響を与える可能性のある「不確実性」が長引くことになる。原油価格については急上昇する可能性が高いものの、現在、市場は供給過剰状態にあり、必要があればOPEC加盟国及び非加盟国による協調減産が速やかに解除される可能性がある。
仮にイラク政府が同国に駐留する米軍の撤退を求める決議を可決した場合、イラクは重要な軍事・外交上の拠り所を失い、イラク国内におけるイランの影響力拡大に対抗する手段を失うことになると考える。(*2) そして、イラク国内のスンニ派もクルド人勢力もイラクがイランの衛星国家になることを望んでいないため、このような決定が行われれば、内戦の再開や国家分裂のリスクを高めることになるだろう。さらに、米国政府がイラクに対して制裁を科す可能性もあり、すでに社会・政治情勢が緊張状態にある中、さらなる経済的な痛手が加わる可能性もある。
投資の観点からは、今回の中東での事件や、それに続いて起こりうるショックや問題の深刻化によって、リスクオフおよび質への逃避、すなわちクレジット・スプレッドの拡大、安全通貨である米ドル / 円 / スイス・フラン高、米 / 独 / 日本国債の利回り低下をもたらすことは間違いない。しかしながら、長期的に見れば、緩やかな景気拡大と中央銀行の金融緩和という潮流が市場を牽引し続けると予想され、今回の中東での事件とそれによる広範な影響によって、現状が大きく変わる可能性は低いと考える。こうした状況を踏まえ、投資スタンスを柔軟に保ち、経済状況に影響されやすい取引についてはポートフォリオのバランスを維持するように努める。現時点では、長期の景気拡大期待に基づくスプレッド商品のロング、ターム・プレミアムによる収益獲得を企図したデュレーションのロング、構造的な金利低下、および景気後退時にも利益を獲得できる潜在力を持つポートフォリオ戦略を維持している。ただし、繰り返しになるが、我々は柔軟な投資スタンスを保ち、バリュエーションや状況の変化に応じてポートフォリオ戦略を変更する可能性がある。
(*1) 本レポートの発行後、イランは1月8日に米軍が駐留するイラクのアサド空軍基地にミサイル攻撃を実施。
(*2) 本レポートの発行後、1月5日に招集されたイラク議会において、同国に駐留する米軍やその他の外国部隊の撤退を求める決議が可決。
留意事項 1
PGIMフィクスト・インカムは、1940 年投資顧問法に基づき米国で登録している関連投資顧問会社であるPGIM インクおよびプルデンシャル・ファイナンシャル・インクを通して事業を行っています。PGIMフィクスト・インカムはニュージャージー州ニューアークを本社とし、世界における次の事業も含みます。(i) ロンドンのPGIM リミテッドにおけるパブリック債券部門、(ii) 東京のPGIMジャパン株式会社(PGIM Japan)、(iii) シンガポールのPGIM(シンガポール)におけるパブリック債券部門。プルデンシャル・ファイナンシャル・インクは、英国を本拠地とするプルーデンシャル社とはなんら関係がありません。Prudential、PGIM、それぞれのロゴおよびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクおよびその関係会社のサービスマークであり、多数の国・地域で登録されています。
英国および欧州経済領域(EEA)では、PGIMインクの間接子会社であるPGIMリミテッドが情報提供を行います。PGIMリミテッドの登記上の所在地は以下の通りです:Grand Buildings, 1-3 Stand, Trafalgar Square, London WC2N 5HR。PGIMリミテッドは英国の金融庁からの許可・規制を受けており(登録番号:193418)、EEAの様々な法域での正式な営業権を有しています。本資料は英国金融行為規制機構(FCA)の行為規制ソースブックを目的として、プロの投資家または適格機関投資家に対してPGIMリミテッドが提供する資料です。アジアの一部の国では、シンガポール金融管理局(MAS)に登録、認可受けているシンガポールの資産運用会社PGIM(シンガポール)Pte.Ltd.が情報を提供しています。日本では、日本の金融庁に投資顧問会社として登録しているPGIMジャパン株式会社が情報を提供しています。韓国では、投資顧問サービスのライセンスを有するPGIMインクが直接韓国の投資家に情報提供を行っています。香港では、香港の証券・先物取引監察委員会の規制対象企業であるPGIM(香港)リミテッドの担当者が証券先物条例の第一項第一条で定義されている適格機関投資家に対して情報の提供をしています。オーストラリアでは、PGIM(オーストラリア)Pty Ltd. (PGIM オーストラリア)が、(豪州2001年会社法で定義されている)販売会社に対して情報を提供しています。PGIMオーストラリアはPGIMリミテッドの代理人であり、PGIMリミテッドは金融サービスに関して豪州2001年会社法により必要とされる豪州金融サービス・ライセンスの取得が免除されています。PGIMリミテッドは英国法に基づきFCAの監督下にあり(登録番号:193418)、オーストラリア証券投資委員会のクラス・オーダー 03/1009が適用されるためです。なお、英国法はオーストラリア法と異なります。
すべての投資にはリスクが伴い、当初元本を上回る損失が生じる可能性があります。
本資料は、情報提供または教育のみを目的としています。ここに含まれている情報は投資アドバイスとして提供するものではなく、資産の管理または資産に対する投資を推奨するものでもありません。これらの情報を提供するに当たってPGIMはお客様に対して、受託者としての役割を果たしているのではありません。
本資料には機密情報が含まれており、本資料の受領者は、こうした情報の機密性を保持していただくことを承諾したものとします。本資料を当初の配布先以外の方(当初の配布先の投資アドバイザーを含む)に配布することは認められておりません。またPGIMフィクスト・インカムの事前の同意なく、本資料の一部または全部を複製することや記載内容を開示することを禁止いたします。この資料には現時点における資産管理者の意見が記載されており、こうした意見は予告なく変更されることがあります。現時点でPGIMフィクスト・インカムが信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報の正確性、完全性、および情報が変更されないことを保証するものではありません。本資料に記載した情報は、現時点(または本資料に記載したそれ以前の日付)における最新の情報ですが、予告なく変更されることがあります。PGIMフィクスト・インカムは情報の一部または全部を更新する義務を負うものではありません。また、情報の完全性または正確性について明示黙示を問わず何ら保証または表明するものではありません。PGIMフィクスト・インカムの関係会社に関する情報は、単に組織の概観を示すために言及されたものであり、関係会社に代わって勧誘を行うものではありません。本資料は特定の証券、その他の金融商品、または資産運用サービスの勧誘を目的としたものではありません。本資料は、投資に関する助言を目的としたものではなく、投資に関する判断材料として用いるべきではありません。
本資料はそれぞれのお客様の置かれている状況、投資目的、あるいはニーズを考慮しておりません。いかなる証券、金融商品、または投資戦略についても、これらが特定のお客様もしくは見込み客にとって適切であるかどうかに関する決定は下しておりません。本資料に記載されている情報は、本留意事項もしくは本資料の他の箇所に記載されている説明、警告および注意事項に基づいて提供されています。リスク管理に関するあらゆる考察は、リスクのモニターおよび管理に対してPGIMフィクスト・インカムが最大限の努力を払っていることを示すものであり、リスクが低いことを意味するものではありません。どのようなリスク管理技術も、いかなる市場環境においてもリスクを最小化または解消できることを保証することはできません。本資料は、法律、税務、会計上の助言を目的としたものではありません。この資料は、現地の法律や規制が、米国の法律や規制と異なるような法的管轄区域において配布あるいは使用されることを目的として作成されたものではありません。
特定の証券およびその発行者に関する記述は、単に説明を目的としたものであり、こうした証券の購入または売却を推奨するものではないということにご留意ください。本資料で言及されている証券は、PGIM フィクスト・インカムが運用するポートフォリオに含まれる場合と含まれない場合があり、また、仮に当該証券がポートフォリオに含まれていたとしても、これらが引き続き保持されるとは限りません。
本資料でベンチマークとして引用されている財務指標は、情報提供のみを目的としています。なぜなら、ポートフォリオの保有資産や特性はベンチマークとは大きく異なる場合があるため、ベンチマークの使用には限界があります。インデックスに直接投資することはできません。ポートフォリオのパフォーマンスに影響を与える一方で、ベンチマークのパフォーマンスに影響を与えない要因には、ポートフォリオのリバランス、キャッシュフローのタイミング、信用力、分散、ボラティリティの違いなどが含まれます。さらに、財務指標は手数料、適用される税金、またはリターンを低下させる取引コストの影響を反映していません。特に断りのない限り、財務指標は配当が再投資されることを前提としています。
本資料に記載されている予測や見通しは、本資料の発行時点のものであり、予告なく変更されることがあります。実際のデータは様々であり、本資料には反映されていない場合があります。予測や見通しには大きな不確実性が伴います。よって、いかなる予測や見通しも、多岐にわたる可能性における単なる1つの例に過ぎません。予測や見通しは、特定の前提条件に基づくものであり、経済・市場環境の変化に応じて大きく変化する可能性があります。PGIMフィクスト・インカムは、いかなる予測または見通しであっても、これらの更新または変更を行う義務を負うものではありません。
本資料に記載されているパフォーマンス目標は、PGIMフィクスト・インカムによって適宜見直しされるものであり、単に現時点での見込みを示すものに過ぎません。本資料に記載されている商品や戦略がパフォーマンス目標を達成すること、あるいは元本を回収できることを保証するものではありません。過去のパフォーマンスは将来の運用成績を保証するものではなく、また信頼できる指標でもありません。投資は損失となることがあります。
留意事項 2
本資料はPGIMフィクスト・インカムが作成した"Iran Commentary, January 2020"をPGIMジャパン株式会社が翻訳したものです。
本資料は、特定の金融商品の勧誘または販売を目的としたものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
本資料は法務、会計、税務上のアドバイスあるいは投資推奨等を行うために作成されたものではありません。
本資料に記載されている市場動向等に関する意見等は本資料作成日時点でのPGIMフィクスト・インカムの見解であり、事前の通知なしに変更されることがあります。
本資料は、PGIMフィクスト・インカムが信頼できると判断した各種情報源から入手した情報に基づき作成していますが、情報の正確性を保証するものではありません。PGIMフィクスト・インカムは、米国SEC 登録投資顧問会社であるPGIM インクのパブリック債券運用部門です。
原文(英語版)と本資料の間に差異がある場合には、原文(英語版)の内容が優先します。
当社による事前承諾なしに、本資料の一部または全部を複製することは堅くお断り致します。
“Prudential”、“PGIM”、それぞれのロゴおよびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクおよびその関連会社のサービスマークであり、多数の国・地域で登録されています。PGIMジャパン株式会社は、世界最大級の金融サービス機関プルデンシャル・ファイナンシャルの一員であり、英国プルーデンシャル社とはなんら関係がありません。
PGIMジャパン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第392号
加入協会 一般社団法人日本投資顧問業協会、 一般社団法人投資信託協会
PGIMJ202001090018