- 米連邦準備制度理事会(FRB)は、15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で75bpsの利上げを決定した。これにより、FF金利はコロナ禍直前と同水準の1.75%となった。またFRBは、今後は利上げペースを更に速め、2022年末時点のFF金利は3.4%、2023年末は3.8%、その後2024年末には3.5%に小幅低下するとの長期的な展望を示した。但し、今後も経済指標等のデータ次第で柔軟に政策決定していくことが強調された。
- FRBは今後3年間の成長率を下方修正し、失業率とインフレ率は上方修正したが、これらはFRBが想定する長期見通しに非常に近い水準であり、より積極的に金融引き締めを実施するにも拘らず、力強い米国経済を背景に依然としてFRBがソフトランディングを想定していることが示唆されている。一方、ロシア・ウクライナ紛争やサプライチェーンの混乱など、FRBでは制御不能な要因がソフトランディングの成否を大きく左右することも指摘された。
- 仮に7月のFOMCで75bps利上げされると、FF金利は僅か4ヵ月半で0%から2.5%に上昇することになる。こうした金融引き締めの大半は既に市場に織り込まれており、金利に敏感な不動産セクターや、小売セクターには影響が出始めている。FRBは今年計画した大半の利上げを実施することが見込まれるが、インフレ上昇には需給の両面があるため、利上げの道筋には引き続き大きな不確実性が伴う。
- FOMC前には75bpsの利上げを見据えてイールドカーブは大きくベアフラット化していたが、FRBがソフトランディングを強調したことで市場の動きには一服感が見られた。FOMC後、株価は上昇、信用スプレッドは縮小し、イールドカーブは2年債利回りが20bps以上低下したことでブルスティープに転じた。しかし、これらはFOMC直前の動きが一部巻き戻されたに過ぎず、更には16日に再びリスクオフの様相が広がっている。
- 現時点において、FRBの目標レンジの中間値1.63%と、市場が織り込むFF金利のピークである3.8%の間には大きな差異が生じている。利上げサイクルの典型として、市場の織り込みが中央銀行に先行した場合、中央銀行が市場に追いつくまで金利水準は値固めにしばらくの期間を要する。足もと急激な金利上昇がクレジットスプレッドの拡大をもたらしたが、仮に金利がレンジ内の推移となった場合、リスク資産市場も落ち着きを取り戻す可能性がある。
- 但し、長期金利とクレジットサイクルの今後の方向性を結論付けるのは時期尚早である。最終的な長期金利の水準はFF金利のピーク次第であり、クレジットスプレッドについてはFRBが経済をソフトランディングできるかどうかによって大きく左右される。
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