地政学リスク

ウェビナー:イラン情勢の考察

2026年3月3日

 

※本動画の要約および字幕は生成AIを用いて作成されたものです。内容については注意していますが、その完全性を保証するものではありません。

 

米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃は、地政学的な構図をさらに複雑化する恐れがあります。情勢が移り変わる中、この中東紛争がリスク見通し、経済環境、そして様々なセクターや地域に資産価値にどのような影響をもたらすのかに注目が集まっています。

こうした状況の中、PGIMインクは3月2日(現地時間)、チーフ・グローバル・エコノミストであるダリープ・シンやエマージング債券部門責任者のキャシー・ヘップワースなどをスピーカーとして緊急のウェビナーを行いました。ウェビナーサマリーを簡易版(上記PDF)と詳細版(下記本文)にてご案内いたします。


ウェビナーサマリー(詳細版)

 

ウェビナーの背景と問題提起

週末に発生した中東地域における大規模な軍事攻撃を受け、ウェビナーではその地政学的影響とグローバル金融市場への波及経路について、多角的な分析を行った。PGIM中東地域の責任者が、以下の2つの論点を提示し、各参加者が市場の動向、リスクシナリオ、今後の見通しを述べた。

  1. 攻撃の規模と直接性が大きく、市場の「ミスプライス」の可能性が高いこと
  2. イラン国内の政治的流動性が高まり、体制変化の可能性と長期的不安定化の両面が存在すること

 

マクロ分析 (ダリープ・シン、チーフ・グローバル・エコノミスト)

米国とイスラエルの強硬手段はハイリスク・ハイリターンの「斬首作戦」であり、トップ指導部の排除により戦術的には成功した。しかし最終目標が明らかになっておらず、戦略的には評価できない状況のままである。レジームチェンジなのか体制変革なのかで大きく異なるが、いずれにしても、攻撃だけで達成できるものではないと考える。その上で今後の展開について3つのシナリオを想定。

 

1:ポジティブシナリオ 「ペルシャのルネサンス」

現体制の崩壊を契機に平和的に穏健な政権への移行が実現する場合である。半世紀近く地域を不安定化してきた独裁政権が終わり、イランや周辺地域に大きな成長の可能性をもたらすシナリオである。しかしこれは「言うは易し」のシナリオであり、今回の事態に備えてイラン指導部の体制は分散化・冗長化されてもいる。過去の中東における国家再建の難しさを踏まえると、実現性は良く見積もって25%程度だろう。ただし一週間前にはこの可能性はゼロだったことから、もしこのシナリオが実現すれば、地域の緊張緩和や経済正常化への期待から市場は大幅なラリーとなる可能性もある。

 

2:ベースケース「壊すのは我々だが、直すのはあなた達」

より現実的なものとして、米国とイスラエルは現体制の打倒は実現するものの、政権移行のためのリスクテイクや資源投入を行う意思や能力を持たないケースが考えられる。その結果、十分な政治的統合が進まず、派閥間の内紛状態の泥沼化や権力の空白が長期化するシナリオが示された。しかしこの場合、米国やOPECが石油供給を増やせば、混乱は次第に局地化し、グローバル市場への波及は限定的となる可能性がある。

 

3:ネガティブシナリオ「現体制による消耗戦」

ワーストケースは、現体制が持久戦に持ち込み、近隣諸国への攻撃を継続し、テロ行為やエネルギーインフラ攻撃、海上輸送路の攪乱を通じて混乱を拡大させる展開である。特にホルムズ海峡の長期的封鎖が生じた場合、原油価格が大幅に上昇し、質への逃避やリスクオフなど、典型的な供給ショックが発生する可能性についても25%程度見込まれる。

 

 

エネルギー市場の動向 (デイビット・ウィナンズ、クレジット・アナリスト)

ウェビナー時点では、原油価格の上昇幅は限定的で、市場は冷静に反応している。背景には、中国を中心に原油輸入国は戦略備蓄を積み増しており、民間在庫も踏まえると、ホルムズ海峡が封鎖されていても1ヶ月程度の備蓄が存在し得ること、そして米国がシェール革命以降、世界最大の石油消費国である米国が、同時に世界最大の石油生産国となっている構造変化がある。また、自身が米軍に所属していた経験から言えば、米軍はホルムズ海峡封鎖に対して以前より備えており、イラン軍が封鎖を維持できるかは懐疑的である。そうしたことを踏まえて現在の原油市場が落ち着いていると見られる。なお、天然ガス市場については多少事情が異なり、カタールからの供給制約が欧州に与える影響が懸念されるものの、2022年のロシアガス危機時ほどの構造的混乱には至らないだろうと見込まれる。

 

 

金融市場・新興国債券市場 (キャシー・ヘップワース、新興国債券部門責任者)

株式市場では反応に地域差があるものの、金融市場の反応は現時点では限定的なリスクオフにとどまっている。ドルや米国債への急激な逃避も確認されておらず、投資家は状況の進展を見守っていると見られる。新興国市場では通貨安が一部で進行しているが、多くの新興国の中央銀行が為替変動の抑制に動いている。新興国債券市場はここ1年の良好なパフォーマンスを背景にスプレッドはレンジの下限近くをつけており、足元での拡大も現段階では限定的である。

しかし、この事態が何時まで続くのかが問題でもある。地域ごとに濃淡はあるものの、GCC諸国では格付も高く、債務水準も高くはないが、原油輸出への依存度が高いことから、供給への支障がいつまで続くのかが注目される。一方中国についてはこの紛争に巻き込まれる可能性は低いだろう。大量の原油輸入国である一方、備蓄も十分に備えている。中国についてはむしろ3月末の米中首脳会談において貿易問題に進展があるかどうかが注目される。いずれにしても「事態がいつまで続くか」「インフレへの影響」「原油価格の動向」に左右されるだろう。

 

 

まとめ (ダリープ・シン)

各パネリストからの意見を踏まえて、以下の4つのポイントを提示し、それらの要因を見極めることが重要であると述べて、ウェビナーをまとめた。

  1. 市場はホルムズ海峡封鎖が何時まで続くのか、現存石油備蓄のバッファーを使い果たすほどの長期戦になるかなど、定量化できるものから価格に織り込んでいる。「安定的かつ穏健な政権移行」というアップサイドシナリオも生きており、これが市場の反応が限定的な一因とも言える。
  2. 今回の事態の影響は地域別に強弱があるが、世界最大のエネルギー生産国である米国は有利な立場にあり、その影響は限定的と言えるだろう。原油価格が極端に急騰したり、事態が長期化しない限り、FRBの政策判断に大きな影響はないだろう。
  3. 長期的な影響として、今回の衝突は、世界が巨大かつ相反する力で綱引きしていることが改めて浮き彫りになった。1つは100年に一度と言われるテクノロジー主導の生産性ブーム。世界経済の成長率を引き上げ、金融市場に理想郷をもたらす可能性があるだろう。他方で地政学的な現実もあり、世界はより対立的で分断され、「ルールに基づく秩序」から、実力行使による「結果重視の秩序」へと移行しつつあることが見て取れよう。
  4. こうした状況は、経済戦の激化やエネルギー供給分断による供給ショック、経済制裁の増加、軍事費の拡大、財政主導の優越化、イランの事態をみて「力こそ正義である」と受け取り、核保有を進める動きなど、不確実性とリスクプレミアムの上昇をもたらし得るだろう。

スピーカー

Daleep Singh

Vice Chair and Chief Global Economist

Cathy Hepworth

Managing Director and Head of Emerging Markets Debt

David Winans

Principal and Credit Analyst

Mohammed Abdulmalek

Managing Director
Head of Middle East

PGIMJ127108 5267252-20260303