プライベート・クレジット・シリーズ:パート 1

プライベート・クレジットは単一の市場ではない

広範なプライベート・クレジット市場におけるリスクと耐性を理解する

資産の種類ではなく、ポートフォリオの構造と組み合わせ方が、資産配分の決定を再形成している

  • プライベート・クレジットは従来の枠を超えて拡大しつつあり、投資家にとって、より幅広い差別化された投資機会が生まれている。
  • ダイレクト・レンディングを巡る最近の報道は、資産クラス全体にわたるストレスではなく、クレジットのサイクルに伴う価格調整を反映したものである。
  • 投資パフォーマンスは、特定の種類の資産ではなく、ポートフォリオの構成および組み合わせ方によって左右される。
  • 資産配分の担当者にとっての課題は、「投資機会へのアクセス」から、「広範な投資機会の中でより精緻に資金を配分する」ことに変化しつつある。

プライベート・クレジットは、ニッチな投資対象から、機関投資家のポートフォリオにおける戦略的な構成要素へと進化を遂げている。過去15年間で市場規模は3倍以上に成長しており、そのペースはパブリック・クレジット市場を大きく上回っている。

その結果、プライベート・クレジットがどのように位置づけられ、理解されるかが、資産配分の決定においてますます重要になっている。全6回で構成されるプライベート・クレジット・シリーズの第1弾となる本レポートでは、「プライベート・クレジットは単一の市場ではない」という基本的な前提に焦点を当てる。単一の市場として扱うと、どこにリスクが集中し、どこに耐性が備わっているのかが曖昧になるおそれがある。

構造的成長

プライベート・クレジット市場は2010年以降3倍以上の規模に成長し、現在では3兆米ドル超に

出所:プレキン、ピッチブック、マッコーリー、メットライフ/HIMCO、ACC/AIMA、デロイト、PGIM、2026年4月15日現在。

報道と現実

プライベート・クレジットは、ダイレクト・レンディングの視点から議論されることが多い。足元のプライベート・クレジットに関するイベントが影響を及ぼす範囲は相対的に限定された領域にとどまるにもかかわらず、これに関する最近の報道が、プライベート・クレジットに対する認識を広範に形成しつつある。

 

業界の推計によると、ミドルマーケット向けダイレクト・レンディング(MMDL)は世界のプライベート・クレジット市場全体の約30%を占めており、そのうちエバーグリーン型およびセミ・リキッド型のビークルが占める割合はわずか15%程度にとどまっている。

 

つまり、こうした報道の直接的な影響を受ける範囲は、世界のプライベート・クレジット市場全体のわずか5%強にとどまる1。プライベート・クレジットのバリュエーションの質、集中リスク、流動性は重要ではあるが、その一方で業界は、プライベート・クレジットの多くのセグメントを、投資家にとって意味のある形で明確に区別することに十分取り組んでこなかった。このため、一部の分野の課題を過大に評価する一方で、他の分野の耐性を見過ごすリスクが生じている。

 

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プレキンおよびPGIMによる推計。

セグメント構成の変化

世界のノンバンク/非政府機関向けのプライベート・クレジット市場は、2010年以降で3倍に成長し、足元で3兆米ドル超の規模に達している。しかし、その成長はセグメント間で大きなばらつきがある。カテゴリーは多岐にわたるため、各セグメントでの資金配分やリスクの性質などにおける重要な違いを見えにくくしてしまう可能性がある。

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出所:PGIM。注記:IGは投資適格債、HYはハイイールド債を指します。

投資機会を踏まえた資産配分

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プライベート・クレジット市場は、複雑性プレミアムおよび流動性プレミアムを獲得するための長期の戦略的な手段と、短期の投資機会の両方を提供する。短期の投資機会は、一般的には信用イベントや経済的なイベントに起因して発生するプライベート・クレジット市場の需給の不均衡によって生じる。重要なことは、投資機会が引き続き拡大しており、よりカスタマイズされたポートフォリオ構築が可能になりつつあるという点にある。

例えば年金基金では、これまでは小規模なダイレクト・レンディング投資が中心だったが、より幅広い商品に資金を振り向けるようになっており、年金基金がアクチュアリー上の理由から既に保有している満期の長い高格付債券について、流動性プレミアムが魅力的であるとの認識が広がっている。

プライベート・クレジットは、より難しい局面へとサイクルが移行しつつある。こうした中で資産配分の担当者は、規律あるオリジネーション、慎重な流動性管理、集中リスクの管理、そして厳格なリスク管理のフレームワークを重視するようになっている。

 

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ケーススタディ:年金リスク移転の実施に向けて準備を行う年金基金

ここで示したケーススタディおよび本レポートで行った広範な分析は、プライベート・クレジットへの資産配分のあり方が変化しつつあることを示している。ポートフォリオにおけるプライベート・クレジットの役割は、エクスポージャーの選択、構成、組み合わせ方など、様々な要因が考慮されるより繊細なものになりつつある。

ある中規模の年金基金は、8~12年以内の年限で年金リスク移転(PRT)の実施を検討していたが、既存のポートフォリオ構成と将来の目標との間に不調和が生じつつあった。同年金基金における優先事項は、ポートフォリオのキャッシュフローを改善し、プライベート・エクイティへの依存度を引き下げつつ、全体的なリターン目標を維持することであった。ここでは、同年金基金がこれら複数の目標を達成するために、どのようにプライベート・クレジットを活用するかについて検証している。

 

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