四半期レポート:国内債券

日本経済・債券市場四半期見通し 2026年7-9月期

2026年7月14日

エグゼクティブ・サマリー

 

日本経済

  • 原油高の圧力は既に峠を越えたとみているものの、メモリー価格の高騰、実質賃金の増加、企業の積極的な価格設定行動といったインフレ要因から年度後半に消費者物価上昇率は再加速し、春闘賃上げ要請へつながると考えられる。

 

国内債券市場

  • 物価の基調が2%を超えるリスクが顕在化しない限り、日銀は半年に1回程度の利上げを続けると予想している。為替の円安トレンドを反転させる力は限定的だろう。
  • 370兆円投資の官民の内訳等、27年度予算を巡る不確実性は大きい。最終的な国債増発額は大きくならないと考えているが、投資家の買い控えが起こりやすいのは事実で、ネット発行額の大きい10年ゾーンを中心に緩やかな金利上昇を見込んでいる。
  • クレジット市場では、財政拡張リスクや海外クレジット相場の軟化が調整要因となり得るものの、発行体のファンダメンタルズは総じて底堅く推移し、緩やかなスプレッドタイト化を見込む。

注目の経済指標・イベント

 

原油高一服も、内生インフレの兆候

  • 米政権は中間選挙を控えてイランとの対立を激化させないインセンティブがあり、原油高圧力は既に峠を越えたとみられる。
  • 一方、AI関連が牽引する半導体市場は活況で(図1)、米国や東アジアでは長期的な生産性向上によるディスインフレ圧力よりも、目先の関連財値上げや所得増によるインフレ過熱リスクの方が勝っているようだ。

図1:世界半導体市場とハイパースケーラー設備投資

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注:半導体販売はWSTS予測、設備投資はBloombergコンセンサス予測。 出所:Alphabet、Amazon、Meta、Microsoft、Oracle (Form 10-K、決算発表資料)、世界半導体市場統計(WSTS)、BloombergよりPGIMジャパン作成。
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注:半導体販売はWSTS予測、設備投資はBloombergコンセンサス予測。 出所:Alphabet、Amazon、Meta、Microsoft、Oracle (Form 10-K、決算発表資料)、世界半導体市場統計(WSTS)、BloombergよりPGIMジャパン作成。
  • 本邦企業の設備・人手の不足感は強く、円安コストや人件費を販売価格へ転嫁する度合いは高まるだろう(図2)。年度後半にコアCPI前年比は2%を優に上回り、春闘賃上げ要請へつながると考えられる。

図2:日銀短観(販売価格、雇用人員、生産設備)

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出所:日本銀行よりPGIMジャパン作成(2026年6月時点)
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出所:日本銀行よりPGIMジャパン作成(2026年6月時点)

内外金融政策見通し

  • エネルギー価格の落ち着きを前提とすると、ECBのタカ派姿勢は後退し、当面金利は据え置かれるだろう。
  • 米FRBは6月FOMCで、原油高の直接影響しないコアPCEデフレータの見通しを大きく引き上げており、ドットプロット(政策金利見通し)中央値よりも大幅に利上げする可能性がある(図3)。

図3:FOMCの年末ドットプロット中央値

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注:(テイラールール水準-年末コアPCE)=(長期ドット-2%)+(年末コアPCE-2%)*0.5-(年末失業率-長期失業率)*0.5 出所:米FRBよりPGIMジャパン作成(2026年6月時点)
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注:(テイラールール水準-年末コアPCE)=(長期ドット-2%)+(年末コアPCE-2%)*0.5-(年末失業率-長期失業率)*0.5 出所:米FRBよりPGIMジャパン作成(2026年6月時点)
  • 日本銀行は半年に一度程度の利上げを続けると予想している。実際のインフレ率が2%を超えていても基調的な上昇率は未だ2%に到達していないという見方を維持していることから、中立金利を上回ってしまわないよう、利上げ後の金融環境がなお緩和的か確認してから次の判断を行うプロセスを踏んでいると思われる。基調が2%を上回るリスクが大きいという見方に変わることがあれば、そのタイミングで3ヵ月に1度程度へと利上げが加速するだろう。

 

国債需給見通し

  • 高市政権の370兆円投資の官民内訳は不明ながら、消費減税と合わせて27年度の国債増発圧力となるだろう。個人向け国債の販売増と変動利付債の発行開始で、最終的な固定利付債の増発額は大きくないとみているが、発行計画策定の時期は財政懸念が高まりそうだ。
  • 日銀は、国債買入を月2.0兆円まで減額し、その後は据え置くことを決定した。残高360兆円程度となる29年度末まで計画を見直すことは原則ないだろう。

 

国内債券市場

 

国債:2026年4-6月の振り返りと7-9月の見通し

  • 2026年4–6月期は、中東情勢に関して景気悪化リスクよりインフレ懸念の方が大きいとの認識が広がるもとで、金利が上昇した。原油価格と共に5月中旬まで大きく上昇した後は、6月に日銀が利上げする中でもピークをやや下回った水準で推移した。カーブ上では、政府の利上げ牽制姿勢から2~5年が、発行減額の累積効果で30~40年がそれぞれ下支えされる中、10~20年のアンダーパフォームが目立った。
  • 7-9月期は、高市政権の成長戦略に関する思惑が主要テーマとなる。概算要求を皮切りに来年度予算が具体化し始める8月終わりからの緩やかな金利上昇を見込む。370兆円投資の官民内訳、初年度の金額、GX等の既存計画との重複の程度が不明なため、投資家の買い控えが起こりやすい。積極的に売る市場参加者は限られると思われるが、ネット発行額の大きい10年主導で金利が上昇するだろう。
  • 日銀は、本音では中立かそれ以上まで金利を引き上げる必要のあるインフレ環境になった可能性を意識し始めていると思うが、デフレ脱却判断にさえ至っていない政府との整合性から、緩和は続けるが緩和度を緩めるという建付けでの利上げ姿勢を崩していない。加えて中立金利が正確に分からないため、利上げのたびに半年のインターバルを空けて、なお緩和的か判断する方策を取るしかないだろう。
  • 来年まで見通した金利上方リスクは、米国景気が過熱気味に推移する中でFRBが積極利上げを実施し、ドル高・円安が急速に進むことで高市政権のインフレ容認姿勢に変化が現れるケース。この場合、利上げペースが四半期毎へと加速すると思われるが、財政や為替の極端なショックに対する懸念も解消に向かい、投資家需要が戻ってくることで、超長期債の利回りはベースケースと変わらないと見ている。
  • 下方リスクは、ハイパースケーラーの利払い・減価償却費が利益を圧迫する中、米国で株式市場の水準訂正が起こり、設備投資の伸び鈍化や逆資産効果による消費減といった実体経済への影響も出てくるケース。この場合は、国内でも製造業中心に減益となることから27年春闘が若干落ち込み、26年12月頃と予想される1.25%への利上げが結果的に最後となる可能性があるだろう。

図4:10年国債利回りの推移

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出所:Bloomberg(2026年6月30日時点)
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出所:Bloomberg(2026年6月30日時点)

図5:国債イールドカーブ

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出所:日本相互証券(2026年6月30日時点)
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出所:日本相互証券(2026年6月30日時点)

クレジット:2026年4-6月期の振り返りと7-9月期の見通し

  • 4-6月期の国内社債市場は、金利のボラティリティの高さにも関わらず、絶対利回りの魅力から投資家需要が根強く、総じて底堅く推移した。4月にはイラン情勢の緊迫化を受けたリスクオフ局面もみられたが、企業ファンダメンタルズへの影響が限定的とみられたことに加え、月末に向けて新発案件が減少したこともあって、スプレッドの上昇は限定的だった。5月も金利ボラティリティが高い局面が続いたものの、市場は大型案件を円滑に消化した。とりわけアルファベットによる円建て初回債は、海外発行体による過去最大規模の円債起債となり、市場の吸収能力の高さを示した。6月には、日銀会合後に買いフローが戻った一方で、低クーポン債の断続的な売りフローにより、公共セクターを中心に一部でワイド化圧力が高まった。ただし社債市場全体に波及するほどではなかった。

図6:対国債スプレッド(bps)

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出所:野村総合研究所(2026年6月30日時点)
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出所:野村総合研究所(2026年6月30日時点)
  • 円建社債の4-6月期の新発債発行額は5.9兆円となり、前年同期比15%増となった。特に円建外債の発行が活発であり、アルファベットの初の円債総額5,765億円のほか、バークシャー・ハサウェイやルノーによる大型起債が見られた。劣後債では三菱UFJ FG・三井住友FGによる銀行AT1債に加え、ソフトバンクグループやJFEホールディングスなどが劣後債を起債した。
  • 7-9月期のクレジット相場は、投資家の利回り志向を背景にした底堅い社債への需要と、日銀の追加利上げペースと財政拡張リスクを意識した国内金利のボラティリティの綱引きで左右されると思われる。投資家の利回り志向から社債需要は底堅く、緩やかなスプレッドタイト化が促されるだろう。特に、中期ゾーンを中心とした劣後債・大型グローバル円債案件には、スプレッドレベルおよびボリュームプレミアムの観点から魅力的な投資機会が引き続き存在する見込み。個別銘柄選別および中期・劣後債を中心としたキャリー戦略の重要性が再認識される四半期になるとみている。ただ、高市首相の財政拡張政策に起因するリスクプレミアムが超長期ゾーンに転嫁される局面や、金利上昇で含み損を抱える低クーポン債売却などは、スプレッドのタイト化を阻む要因になり得る。さらに、すでに高値圏にある海外クレジット相場が軟化することがあれば、円クレジット市場に調整がもたらされる可能性もあるだろう。
  • 本邦社債発行体のファンダメンタルズは総じて底堅く推移するとみている。中東情勢の実体経済への波及リスクは後退し、半導体・AIインフラ需要が製造業の利益回復を牽引していく構図が見込まれる。好業績と堅調なキャッシュフロー創出、適切なレバレッジコントロールを背景に、インフレによる費用増、金利上昇による利払い負担増にも一定の耐性があると期待できる。現状の円相場は、輸出企業の為替想定より円安水準にあり、少なくとも輸出企業の業績には好影響を与えるであろうことも付言したい。もちろん、財務バランスの改善を遅らせたり、財務レバレッジの急上昇を伴ったりする、将来成長のための設備投資やM&Aの積極化、資本効率向上のための自社株買いを含む株主還元の拡大には留意が必要である。

図7:年初来トータルリターン

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出所:野村総合研究所(2026年6月30日時点)
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出所:野村総合研究所(2026年6月30日時点)

PGIMJ130739 55737050-20260713