AIによる創造的破壊が一部の業界を陳腐化させるとの懸念が高まる中、最近のローン市場のボラティリティを通じて、CLOの下位メザニン・トランシェ間での断絶が浮き彫りとなっている。依然としてCLOシニア・トランシェは相対的に影響を免れている一方で、エクイティとメザニン・トランシェでは銘柄間でパフォーマンス格差が拡大するとともに価格への圧力が増している。こうした中、最近の顧客との会話の中で、低格付のCLOトランシェでは元本が毀損する可能性があると我々が指摘すると、当惑する顧客は少なくない。
投資家の間で見られるこうした衝撃を踏まえ、本レポートでは以下について考察する。
現在のメザニン・トランシェとエクイティに対する圧力は、長年にわたって蓄積された信用ストレスを反映したものであり、足元ではAIが一部の業界にもたらす創造的破壊が上乗せされている。デフォルトが低水準であった2013~2020年にかけて組成されたポートフォリオの多くは、リセットやリファイナンスを通じて償還期限が延長された結果、レバレッジが徐々に高まっている発行体へのエクスポージャーの維持へと繋がっている。市場環境が厳しくなるにつれ、従来型のデフォルトおよび債務再編取引(LME)の両方を通してストレスが顕在化し、回収率が低下するとともに、時価ベースでの超過担保比率(MVOC)が徐々に圧迫されている1。
AIによる創造的破壊により、特にソフトウェアおよび関連セクターにおいて、こうした傾向が加速している(PGIMが4月に発行した「AIによる破壊的イノベーションと拡大するCLOのパフォーマンス格差」を参照)。BB格トランシェのMVOCテストの平均値は約105%まで低下しており、元本を全額返済するための余裕(クッション)は限定的となっている(図表1)。
全体的には、MVOCは管理可能な水準(長期平均近辺)にあるように見えるが、その裏では銘柄間で格差の拡大が進んでいる。特に、ストレスに晒されている業種に資産配分が集中している一部のポートフォリオでは、既にクッションがほとんど尽きた状態で運用されている。このように格差が拡大しているため、たとえローン価格の小幅な下落であっても、こうしたポートフォリオは他のポートフォリオよりも大きな影響を受け、メザニン投資家にとっての想定元本回収率の低下が加速する可能性がある。
かつては将来の懸念であったものが、現在では現実のものとなりつつある。BB格トランシェの約3分の1では、元本毀損までのクッションが限定的またはゼロとなっており、約23%でクッションが3%未満、7%では既にゼロを下回っている。こうした傾向は、発行から経年が進んで累積純損失が積み上がっているような、償還フェーズにある案件において最も顕著である(図表2)。
欧州では、ソフトウェアへの直接的なエクスポージャーは低水準だったものの、不十分な分散や特定の個別銘柄への高い集中度がMVOCのクッションにとって重石となっている。再投資期間にある案件においてもこうした圧力は顕著であり、欧州のメザニン・トランシェ(特にB格トランシェ)において、MVOCはより明確に悪化している。欧州のBB格トランシェは、米国で見られるほどまでのカバレッジテストの抵触は回避してきているものの、裏付資産の信用の質は引き続き悪化しており、現時点において欧州のB格トランシェの約7%でMVOCクッションがゼロを下回っている(図表3)。
最近の格付機関による格下げは、こうした信用状況の悪化がもはや理論上でのみ存在するものではないことを裏付けている。MVOCクッションの縮小は、投資家にとって元本毀損という現実のものとなり始めており、MVOCが元本棄損リスクの先行指標として重要であることを浮き彫りにしている。
インデックス・ベースでの価格変動は小幅にとどまるものの、業種や発行体間の格差は依然として大きい。これは社債市場全体で見られる「K字型」の回復を反映したものである。広範なローン市場では年初来でローン価格が約2ポイント下落しているが、ソフトウェアやAIの影響を受ける銘柄は大きくアンダーパフォームしており、平均で約8ポイント下落している。足元でソフトウェア関連銘柄の約42%が90米ドルを下回って取引されている一方、市場全体の約40%は依然として額面価格を上回る価格で取引されている2。このような格差が、CLOポートフォリオ間でのパフォーマンス格差拡大の主因となっている(図表4)。
CLOトランシェの実際のデフォルト率は歴史的に見て低い水準にとどまっているものの、最近の格付動向と信用指標は、メザニン・トランシェにおけるストレスの蓄積を示している。2025年には格下げの動きが加速し、S&P社による米国CLOの下位メザニン・トランシェでの格下げは100件超に達した。このうち、当初BBB格であったものが32件含まれている。この傾向は2026年に入っても継続しており、案件が再投資期間をさらに経過するにつれ、信用状況の悪化がより顕著になっている。
重要なのは、こうした変化が実際の結果につながっていることであり、これには欧州では世界金融危機後初となるシングルB格トランシェのデフォルトが含まれる。これは、注目すべき転換点と言えるだろう。
歴史的に見ると、2012~2018年に組成された米国ローンのデフォルト率は、BB格で約2%、B格で約8%と落ち着いていたが、実際の水準は組成年(ヴィンテージ)によって大きく異なる。より新しいヴィンテージのローンは、担保資産の質の低下、MVOCクッションの縮小、デュレーションの長期化などにより厳しい信用環境に直面しつつあり、今後、損失の発生はより持続的となり、デフォルトの裾野も広がる可能性があることを示唆している。その結果、格下げ(2025年は約9%、2026年初来では約2%)と元本毀損との関係性はより直接的なものとなりつつある。
CLOのメザニン・トランシェによる格差拡大が続く中、運用マネジャーの選別とポートフォリオの構築は、もはや二次的な検討事項ではなく、パフォーマンスを左右する主な要因であることが明確になりつつある。業種別のエクスポージャー、取引における柔軟性、ストレス下にある発行体に対するポジショニングの違いが、ポートフォリオで元本が保全されるか、著しい元本毀損に晒されるかをより一層左右するようになっている。同時に、裏付資産であるローン価格の再評価によって既にメザニン・トランシェへのストレスは増しており、BB格で元本が毀損するケースが増加していること加え、MVOCクッションも縮小が続いている。
一部のCLOトランシェにおいて、さらなるストレスを吸収する能力が低下していることは、メザニン・トランシェの脆弱性が高まっていることを示唆している。これは、我々が長期にわたって高格付のCLOトランシェを選好してきたことの妥当性を裏付けるものであり、現在の市場において、銘柄の選別と高い格付がこれまで以上に重要であることを示している。
1. MVOCテストとは、裏付資産の市場価値に基づき、特定のCLOトランシェの債務残高をどの程度カバーしているかを測定するものである。MVOCが100%を下回ると、裏付資産がそのトランシェの債務残高を完全にはカバーしていないことを意味し、元本が毀損する可能性があることを意味する。
2. Markit、2026年6月時点。
著者
Edwin Wilches、CFA、証券化商品共同責任者
Connor Byrnes、証券化商品シニア・ポートフォリオ・マネージャー
Jordan Rosenhouse、証券化商品ポートフォリオ・マネージャー
Loren Sageser、証券化商品ポートフォリオ・スペシャリスト
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