マルチアセット

移り変わる市場とクレジットの資産配分

2025年9月30日

ローン担保証券、アセット・ベースド・ファイナンス、ディストレスト債券、不動産デットなどの証券化クレジットは、パブリックとプライベートの両市場にまたがり、それぞれの市場が急拡大する中で選択肢の幅を広げています。米国の生命保険会社では、約6兆米ドルの資産のうち3分の1がプライベート・クレジットに投資されており、年金基金でもその配分は2024年比で57%増え、急拡大しています。一方、市場の複雑さは増しており、パブリック・クレジットとプライベート・クレジットの最適な組み合わせを追求する投資家にとって新たな課題となっています。

パブリック・クレジットは流動性が高く、より迅速に時価で評価される一方、プライベート・クレジットは流動性が低い代わりに高い上乗せスプレッドを提供するほか、契約ごとにカスタマイズされた融資条件や厳格なコベナンツなどによって下振れリスクの軽減が図られています。ただし、流動性や手数料体系の面では留意が必要であり、投資家はリスク・リターン、分散、流動性などを総合的に判断する必要があります。両者はデュレーション管理やリスク管理の観点で補完的な役割を果たすため、マルチアセットのポートフォリオにおいて戦略的な組み合わせが求められます。

プライベート・クレジットの主な戦略には、ダイレクト・レンディング、プライベート・ABF、不動産デット、インフラデット、プライベート・プレイスメントなどがあります。それぞれが魅力的な特長やリスク・リターン特性を有しており、投資家は自身の目的に応じてデュレーション、流動性、利回り、規制・税務などの要因を踏まえ、パブリックとプライベート・クレジットを組み合わせたポートフォリオ設計を行う必要があります。例えば、デュレーションの短い変動金利型のプライベート・クレジットに配分している保険会社は、より流動性が高くデュレーションの長い資産への配分によって補完する必要があります。

また、流動性とリスク管理のフレームワークも重要です。プライベート・クレジットへの配分を増やすことでリターンは向上しますが、流動性リスクも高まります。現在の「長期にわたって金利が高止まりする」環境下では、変動金利型のプライベート・クレジットの魅力が増す一方で、信用力の低い借り手へのリスクも増加します。そのため、投資家は案件の選別とファンダメンタルズに基づく与信審査を徹底し、競争が激化する市場で信用リスクを適切に管理する必要があります。マルチアセット・ソリューション、分析ツール、幅広いクレジット資産をカバーするプラットフォームを提供する運用会社がパートナーとなることで、投資家はパブリック・クレジットとプライベート・クレジットそれぞれの投資機会の獲得とリスク管理の両立を目指すポートフォリオを構築することができるでしょう。クレジット市場の変化は機関投資家にとって新たな課題と機会をもたらしています。長期的な投資目標の達成には、柔軟かつ戦略的な資産配分と、強力な分析・運用体制が不可欠となります。

PGIMJ123057 4879750-20251007