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ユーロ圏債券に再び注目が集まる理由

2025年12月8日

ユーロ圏の債券は財政構造が堅固であり、ヘッジ後の利回りが魅力的なため、グローバル債券市場において投資家に幅広い機会を提供しています。特に、米国は政策環境の予測が困難であり、それに比べると、ユーロ圏は深い統合が実現していない状況にあるがゆえ EUの財政ルールやECBの伝達保護手段であるTPIのような仕組みが、安定性を提供する次善策として機能しています。EUの財政ルールの順守は財政規律が維持されることを意味する一方で、TPIは不安定な市場の動きに対する安全装置として機能し、ソブリン債のスプレッドのボラティリティを抑制します。これに加え、欧州各国の拡張的な財政支出計画や、EU予算が変革される可能性もある中で安定性と流動性が高められ、債券市場の厚みと耐性が増しています。

また、ドイツの大規模な財政刺激策は、ユーロ圏全体の成長を押し上げる転換点となっています。これにより、ドイツの財政赤字は対GDP比約5%に達する見込みですが、米国などと比べれば依然として低水準にとどまります。こうした先行支出はドイツの成長を押し上げるだけでなく、強固なサプライチェーンのつながりを有する中東欧諸国や、イタリアのような大規模な製造業の基盤を有する国を中心に、ユーロ圏債券にとって好ましい成長が促されると見込まれます。さらに、ユーロ圏の経済活動は堅調かつインフレは緩和傾向にあり、投資家にとって良好な投資環境を提供しています。

一方、ソブリン債の債務残高の削減状況は国によってばらつきがあり、ポルトガルやスペインなど周縁国では健全化に向けた大きな前進が見られる一方、フランスやベルギーでは大きな改善は見られていません。ドイツは世界金融危機以前とほぼ変わらない健全な債務プロファイルを維持しています。

こうした中、ユーロ圏債券のレラティブバリューは機関投資家にとって非常に魅力的となっていると見ています。ECBの政策金利が2%まで低下する一方で長期債の利回りは上昇しており、これによって魅力的なバリュエーションがもたらされていることに加え、イールドカーブは米国よりも大幅にスティープ化しています。為替ヘッジ後の利回りは米国の投資家にとって特に魅力的であり、アクティブ運用によって付加価値を創出できる可能性があります。欧州社債市場ではスプレッドが縮小しているものの、最終的な利回りは依然として魅力的であり、米国社債と比較しても平均残存期間が短いためボラティリティは抑制的です。

このようにユーロ圏の債券は、スティープ化したイールドカーブ、魅力的なキャリーの機会、制度的な支援メカニズムが相俟って、グローバルの債券市場において非常に魅力的な資金の振り向け先となっており、リスク調整後リターンの向上に寄与するだけでなく、ポートフォリオ分散の観点からも重要な投資対象となっていると考えます。

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