世界的なクレジット市場の拡大は、高レバレッジ企業に複数の資金調達手段を提供している。企業の財務状況により、その選択肢には公募のハイイールド債、シンジケート・ローン(Broadly Syndicated Loans、以下BSL)、あるいは銀行やダイレクト・レンダーからのプライベート・ローンなどが含まれるだろう。本レポートでは、実際の事例を通して、プライベート・クレジットの投資家にとって関心が高いと考えられる以下の3つの重要なポイントについて考察する。
最近PGIMは、あるプライベート・エクイティのスポンサーから、ポートフォリオで保有しているレジャー関連企業のリファイナンスに関する相談を受けた。
当レジャー関連企業がリファイナンスを決断した背景には、いくつかの要因があった。第一に、同社は事業基盤の継続的な拡大、設備投資の強化、顧客体験の向上を追求しており、そのために柔軟かつコスト効率の高い資金調達手段を必要としていた。第二に、過去の買収や保有施設の改修などによって、同社の公募社債を含む債務構造は多層化していた。
PGIMは、オリジネーション・チームおよびアナリスト・チームを通じて、同社および同スポンサーの両方と強固な関係を構築していたことから、パブリックとプライベートの両方を含む多様な資金調達のソリューションに関して議論を行うことができた。両者との議論を踏まえ、PGIMはクラブシンジケートの一員として、今回のリファイナンスを支援するためのプライベート・ローン枠を提供することとなった。
信用力の面では、同社は業界を取り巻く強力な追い風、高い参入障壁、良好な持続的収益の恩恵を受けていた。また、営業レバレッジが改善する中、同社のEBITDAマージンは毎年連続して向上し、保有資産の評価額は10億米ドルを上回っていた。
さらに、同社の資本構造の改善に向けた取り組みには、信用力向上につながるいくつかの施策が含まれていた。同社は、非中核的な資産の売却代金で既存の第一順位抵当権付きタームローン(ファーストリーン・タームローン)の一部を返済し、レバレッジと利払い負担を軽減させた。
PGIMは、同社に関する事前の知識と業界への深い理解を有していたため、同社の信用力が改善傾向にあることを迅速に評価することができた。その後、業界、競合他社、同社の競争力に関して包括的な情報を有するセクター・アナリストが協力して引き受けプロセスを進めた。
PGIMによるリファイナンス計画は、既存の債務を効率的な資本構造へと統合させることにより、同社の短期的な流動性ニーズと長期的な戦略目標の両方に対応するよう設計された。これにより債務管理の負担が軽減され、キャッシュフローが改善することになる。また、長期債務に借り換えることで、同社は短期的なリファイナンスのリスクを低減し、財務の安定性を高めると同時に、継続的な事業拡大と戦略的な施策に資金を振り向けることも可能となった。
当ローンは額面を下回る価格での発行となり、利回りはSOFR+5.00%(最終予想利回りは9.65%)で値決めされた。また、発行から2年間はコール・プロテクション条項の恩恵を受け、繰り上げ返済のリスクも軽減された。なお、今回のリファイナンスのネット・レバレッジは3.6倍だったと試算される。同時に、財務制限条項など債権者保護措置が強化され、負債管理(Liability Management Exercise、以下LME)への耐性が大幅に強化された。
プライベート・クレジット市場の規模が拡大し、市場参加者が増加する中、同市場では大規模な取引が可能となっており、事業規模が大きく、力強く収益が成長しており、利益率が底堅く、経験豊富な経営陣を有し、EBITDAが7,500万米ドルを超えるような大企業にとっても資金調達の新たな選択肢となっている。
本レポートで取り上げた事例は、PGIM のラージキャップ・プライベート・クレジット戦略を通して資金調達された数多くのプライベート・ローンのうちの一例に過ぎないものの、PGIMがプライベート・クレジット投資を行う際に求めるいくつかの特徴を浮き彫りにしており、これには魅力的な経済性、厳格な担保条件、堅固なファンダメンタルズが含まれる。これらが発行体の規模の大きさと相俟って、歴史的に低位のデフォルト率と高水準の回収率につながっている。
今回の事例は、プライベートおよびパブリックのシンジケート・ローン市場間の競争激化によって、いかに市場を跨いだリファイナンスが急増しているかを示すものである。2022~2023年にはシンジケート・ローン(BSL)のダイレクト・レンディングによるリファイナンスが大幅に増加したが、2024~2025年にかけては市場を跨いだリファイナンスは均衡しつつある。
2025年、プライベート・クレジット市場でリファイナンスされたBSLの総額は390億米ドルとなり、BSL市場でリファイナンスされたダイレクト・レンディングの340億米ドルを小幅に上回るにとどまった(図表1)。こうした一進一退の動向は、時間の経過とともに進むパブリック・クレジット市場とプライベート・クレジット市場の融合、資本の代替性、市場環境に応じて変化する両市場の相対価値を示している。
プライベート・クレジットの拡大は主に中小企業向けのダイレクト・レンディングに重点が置かれてきたが、足元ではEBITDAが7,500万~10億米ドルの大企業向けダイレクト・レンディングに裾野が広がっている。歴史的に見て、企業規模の違いは、力強い収益成長、安定したキャッシュフロー、多くの場合には高い利益率、安定的かつ優位性のある市場ポジションに基づいた事業運営の底堅さ、洗練された経験豊富な経営陣など、強固な信用力特性を有していることを示唆する。こうしたラージキャップ企業の借り入れコストはミドルマーケット企業よりやや低いものの、予想される信用損失が低いことを考慮すると、ラージキャップ・プライベート・クレジットの流動性プレミアムは魅力だと我々は考えている。
こうした我々の見方は、①BSL市場と比較して、一般的に担保条項と財務制限条項が厳格である、②企業規模の大きさによって歴史的にミドルマーケット企業よりもデフォルト率が低い、③中小企業よりも力強い収益/EBITDAの成長や良好な利益率など、堅固なファンダメンタルズを有している(図表2)という、ラージキャップ・プライベート・クレジットの有益な特性に基づくものである。プライベート・レンディングにおける強固な担保保護は、積極的なLMEによるデフォルトからプライベート・ローンを保護する役割を果たしている。
担保条件の緩いBSLの割合は過去最高水準にある(図表3)。カーブアウト条項や資産および担保に関する制約の不在など、貸し手を保護する条項が全体的に緩い契約を背景に、パブリック市場における多くの高レバレッジ企業はLMEを実施することが可能となった。LMEは、発行体が貸し手に元本損失を強いる一方で、多くの場合には株主や他の特定の債権者には恩恵をもたらすディストレスト・エクスチェンジであり、BSL市場では常態化している。これに対し、プライベート・クレジット市場では、一般的に借り手の資産に対して強固な担保保護条項が設定(前述の事例検証を参照)されており、これによってデフォルト発生時の回収率が高まる。時間の経過とともに、スポンサーは緩やかな担保条件での追加借入の方法を模索する可能性があることから、担保移転の制限やグループ企業間の資産移転(アセット・ドロップダウン)に関する制約は、PGIMが引き受けを行うプライベート・クレジットの取引において極めて重要な要素となる。
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