地政学的リスク

ロシアのウクライナ侵攻が欧州経済に与える影響

2022年3月2日

  • ロシアによるウクライナ侵攻は欧州経済にとって新たな供給ショックであり、3月10日に予定されている欧州中央銀行(ECB) 理事会での政策決定にも影響を及ぼす。エネルギー価格の上昇は経済の下振れリスクとなる一方でインフレを加速させる要因ともなる中、ECBの政策対応は、インフレの加速よりも経済の下振れリスクに焦点を当てたよりハト派的なものとなる可能性がある。エネルギー価格が上昇を続ければ、ECBが2022年中に利上げする可能性は低下し、金融政策正常化のペースも鈍化すると予想される。
  • PGIMフィクスト・インカムは、ロシアと欧州との長期契約に基づくガス供給が維持されると考えている。また、ロシア以外の国からの追加的なガス供給、および季節が春に向かうことを背景にエネルギー価格の上昇も緩和すると見ている。こうしたシナリオに基づき、PGIMフィクスト・インカムは2022年のユーロ圏GDP 成⻑率予想を4.2%から3.7%に若干下方修正した。
  • 一方で、紛争が更に激化するとともに制裁も強化される中、ロシアが⻑期エネルギー契約を履⾏しないという最悪のシナリオも考えられる。ロシアからのガス供給の途絶は、特にドイツやイタリアなどの経済に重大な影響を与える可能性があり、ロシアからの供給が完全に途絶した場合には、ユーロ圏GDPは最大で5%ポイント低下し、2022年のGDP成長率はマイナス1%に落ち込む可能性がある。
  • また、イタリアなど債務水準の高い国への影響も大きく、ECBは周縁国のスプレッド拡大を防ぐために金融政策の正常化により慎重になる可能性がある。状況が更に悪化した場合、柔軟な資産購⼊、長期にわたる低金利政策といったECBによる積極的な介入なども考えられる。
  • 政治的には、ロシアによるウクライナ侵攻を背景としたエネルギー不足への懸念からグリーン経済への移行が加速する一方で、欧州委員会が推進する「開かれた戦略的自律性(Open Strategic Autonomy)」* が強化されると考えられる。また、ユーロ圏全体の財政統合を巡る議論が活性化する可能性がある。

 

*特に戦略的に重要な分野において、ユーロ圏内の資源を最大限活用しつつ、必要に応じてユーロ圏外のパートナーとも協力するという欧州委員会が推進する政策

 

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