AIの進歩によって引き起こされた最近のテクノロジーセクターのボラティリティにより、広範なレバレッジド・ローン市場ではパフォーマンス格差が拡大しており、CLO市場も大きな影響を受けている。これまでのところ、CLO価格に対する圧力はエクイティとメザニン・トランシェに集中しており、これらは担保資産プールの中のセクターや個別銘柄固有のリスクに対して最も敏感である。対照的に、CLOシニア・トランシェは、担保資産が大きく分散され、また構造的に信用補完の恩恵を受けるため、堅調さを維持している。
本レポートでは、資本構成別の影響に加え、以下について考察する。
CLOの分析において、ソフトウェア向けエクスポージャーが1つの指標として用いられることが多いものの、AI関連の破壊的イノベーションは、ビジネスサービスやヘルスケアといった隣接セクターにもますます影響を及ぼしつつある。我々は、平均すると米国CLOポートフォリオの約11%、欧州CLOポートフォリオの約7%がAIによる破壊的イノベーションの短期的な影響を受けると試算しているが、運用会社間でも影響に大きなばらつきがあると考えている。一方、これらセクターでも借り手の一部は、今後も長期にわたって持続可能な資金繰りを行うことが可能だと予想している。
米国では、ソフトウェア向けローン価格の下落によってCLOエクイティのバリュエーションはコロナ禍以降の底値近くまで低下しており、CLOの資本構成におけるBB格トランシェには圧力がかかっている。例えば、BB格トランシェを対象とした時価ベースでの超過担保(MVOC)テストの平均値は、足元で約1.2ポイント低下して104%となっている。これは、BB格トランシェの元本を全額返済するためのクッションがわずか4%しかないことを意味する(図表1)。1
注目すべき点として、BB格トランシェのうちMVOCのクッションが小さい(3%未満)ものの割合が、今年に入って約23%へと倍増したことが挙げられる。さらに、BB格トランシェの約13%では、クッションがゼロを下回っている。これは、担保資産のバリュエーションがさらに低下した場合に元本が毀損する可能性があることを示唆するとともに、さらなる下振れリスクに対する市場の許容度が低下していることを反映している。また、一部のBBB格トランシェでもMVOCテストに基づくクッションが縮小しつつあり、市場価格は圧力を受け始めている。
出所:PGIM、Intex、Markit、2026年2月時点。
図表1では、最近の市場ボラティリティ上昇局面において、市場全体と比較して特に価格変動が大きかったCLOマネジャー2社をそれぞれハイライトしているが、それぞれの背景は異なる。運用マネジャーの1つ(図中の網掛け部分A)は、市場全体に比べてソフトウェアセクター向けエクスポージャーをアンダーウェイトしていたにもかかわらず、パフォーマンスが特に低調な特定のソフトウェア発行体向けエクスポージャーを有していたという固有の要因によりCLO価格が大きく変動した。これに対し、別のCLOマネジャー(図中の網掛け部分B)のソフトウェア向けエクスポージャーの割合は相対的に高く、その結果としてセクター全体の価格下落に対する感応度が高まり、ポートフォリオ全体およびセクターに起因するボラティリティも高まった。
AIによる破壊的イノベーションは、発行体の一部にとってはファンダメンタルにおける真のリスクであり、格下げとなる可能性があるものの、市場はソフトウェアセクター自体を画一的な1つのリスクとして取り扱うのではなく、ソフトウェアの個別企業のビジネスモデルやサブセクターによる違いを踏まえてリスクを区別するようになっている。その結果、CLO間の格差が拡大しており、投資家は発行体レベルのエクスポージャー、運用会社の引き受けの質、および全体的なポートフォリオの構造をますます重視するようになっている。これにより投資家は、ポートフォリオにおけるソフトウェア向けエクスポージャーの割合といった表面的な情報にとらわれることなく、運用会社ごとの違いを見極めることができるようになっている。
図表2は米国のCLOマネジャー10社のソフトウェア向けエクスポージャーを比較したもの(2025年末以降の加重平均による価格変動率によって順位付け)であるが、運用会社間でパフォーマンスに大きなばらつきがあることだけでなく、ソフトウェアへの資産配分比率、格付別のエクスポージャー、保有しているソフトウェア関連銘柄における価格変動にも大きな格差があることが示されている。これら10社のCLOには明確なばらつきが見られることに加え、AIによる破壊的イノベーションに対する懸念の高まりを踏まえると、特にメザニン・トランシェやエクイティを中心に、今後もパフォーマンス格差が持続する可能性が高い。
出所:PGIM、Intex、Markit、2026年2月時点。運用中の全てのCLOを合算した数値。
考慮すべきもう1つの重要な点は、担保資産となるローンの満期構成であり、これはリファイナンス・リスクや価格変動への感応度に影響を及ぼす。市場における選別姿勢がますます強まる中、近い将来にローンの満期が到来するソフトウェア企業向けエクスポージャーの割合が高い運用マネジャーは、格下げやデフォルトを巡るリスクの高まりに直面するだろう。こうした満期構成の偏りは、プラットフォーム全体にわたり大きな格差を生みだしている。例えば、図表3で示されたCLOマネジャーの一部は、保有するソフトウェア向けエクスポージャーの約50%が3年以内に満期を迎える。一方、3年以内に満期を迎えるソフトウェア向けエクスポージャーの割合がより低いCLOマネジャーも存在する。
出所:PGIM、Intex、Markit。2026年2月時点。
欧州CLOのソフトウェア向けエクスポージャーは、米国に比べると非常に低い水準にある。しかし、ソフトウェア関連発行体で起きた広範な市場の下落が引き続き欧州CLOメザニン・トランシェの重石となっており、欧州CLOの運用マネジャーの間でもばらつきが浮き彫りになっている。
図表4は、欧州のCLOマネジャー間で異なる動向が見られることを示したものである。ある運用マネジャー(図中の網掛け部分A)は、ソフトウェア向けエクスポージャーの割合が低かったものの、保有するソフトウェア関連のエクスポージャーでの価格は相対的に大きく変動した。これに対し、別のCLOマネジャー(図中の網掛け部分B)は、ポートフォリオ全体の価格変動がより大きかったことに加え、市場全体と比較してソフトウェア関連のエクスポージャーの価格変動幅も大きく、集中度の高さがポートフォリオ全体のパフォーマンスを牽引するという傾向と一致している。
出所:PGIM、Intex、Markit、2026年2月時点。
図表5は、最近のソフトウェアセクターの軟化による価格変動の影響を最も受けた欧州のCLOマネジャー10社を示したものである。
出所:PGIM、Intex、Markit、2026年2月時点。運用中の全てのCLOを合算した数値。
一部の運用マネジャーにおけるソフトウェア向けエクスポージャーの割合は、欧州市場全体の平均約7%に対して高いものの、欧州でのソフトウェア向けローンの満期は一般的に米国よりも長く、リファイナンスの圧力が表面化するまでの時間的猶予が長いという恩恵を受けている(図表6)。とは言え、欧州CLOのポートフォリオは、米国よりも個別銘柄への集中度が高い傾向にある。その結果、全体的なソフトウェア向けエクスポージャーの割合は低いものの、特に個別銘柄特有のストレスによって回収率が低下するシナリオにおいては、個別銘柄リスクが高まる。
出所:PGIM、Intex、Markit、2026年2月時点。
ソフトウェア向けローンの価格調整は、米国と欧州のCLO市場にとって、もう1つの重要な転換点となる。AI関連の破壊的イノベーションにより、ポートフォリオの構成、リスク管理、運用マネジャーの引き受け規律に大きな違いがあることが浮き彫りとなった。これまでのところ、その影響はエクイティとメザニン・トランシェに集中しており、シニア・トランシェは引き続き大きな影響を受けないと予想している。最終的に、こうした環境下においては、発行体レベルで担保資産となるローン・ポートフォリオを評価できるCLO投資家は恩恵を受けると考えられる一方、主にセクター向けエクスポージャーの全体の数字に依拠する投資家は苦戦を強いられる可能性が高い。
1. MVOCテストとは、裏付資産の市場価値がCLO債務残高をどの程度カバーしているかを測定するものである。
著者
Edwin Wilches、CFA、証券化商品共同責任者
Connor Byrnes、証券化商品シニア・ポートフォリオ・マネージャー
Jordan Rosenhouse、証券化商品ポートフォリオ・マネージャー
Loren Sageser、証券化商品ポートフォリオ・スペシャリスト
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