四半期レポート:国内債券

日本経済・債券市場展望 2026年4-6月期

2026年4月14日

エグゼクティブ・サマリー

日本経済

  • 日本経済は、原油高による短期的な下押し圧力を受けやすい一方、堅調な春闘を背景に賃金上昇の定着が内需を支える構図にある。原油価格が落ち着けば、高校授業料無償化や統計上の基準改定といった要因により、インフレ率は一時的に鈍化する可能性がある。もっとも、市場の焦点は、賃金上昇がサービス価格の粘着性を伴って持続するか、また実質賃金の改善が消費の回復につながるかに集約されよう。

 

国内債券市場

  • 日銀の金融政策運営は、利上げの都度、マクロ経済および金融市場の反応を確認し、現行の政策金利が依然として緩和的かどうかを評価する枠組みを基本とするとみられる。金融政策の効果が表れるまでに時間を要することを踏まえれば、当面は半年に一度程度のペースで利上げを進めるのが妥当であろう。
  • 超長期セクターの需給環境は改善傾向にあり、イールドカーブは緩やかなベアフラット化を中心とした展開が中心的なシナリオと考えられる。もっとも、骨太の方針を含む財政運営に関する政府のメッセージ次第では、国債の発行・需給見通しを通じて、超長期セクターが神経質に反応する局面も想定される。
  • クレジット市場では、金利動向や中東情勢の企業業績への影響を確認しつつ、需給・信用力の堅調さに支えられてスプレッドは底堅く推移すると予想。投資家需要が中期ゾーンや劣後債に向かいやすい環境が続くと見込む。

注目の経済指標・イベント

AI関連投資の進展

  • 2022年後半以降、生成AIの普及を背景として、米国ではデータセンター建設や計算資源への投資拡大が進み、設備投資を通じて実質GDP成長の下支え要因となってきた。データセンター建設投資の成長率は高水準から落ち着いてきている一方、データセンター建設の進展を受けて、GPUやサーバー等の情報処理機器への投資は、稼働・導入が進みつつあり、底堅く推移する可能性がある。その結果、AI関連投資は、データセンター建設の伸びが落ち着く中でも、規模の大きい情報処理機器投資の動向によっては、実質GDP成長率への寄与が維持される可能性もある。

 

【図1】AI関連投資:データセンター建設と情報処理機器投資(実質・前年比)
AI関連投資:データセンター建設と情報処理機器投資
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AI関連投資:データセンター建設と情報処理機器投資

注:データセンター建設投資は月次データを3カ月移動平均で表示。情報処理機器投資はBEA公表の実質四半期系列を使用。情報処理機器投資には、GPUやサーバー等のAI関連機器に加え、AI以外のIT機器投資も含まれる。本図では、生成AIの普及に伴う計算資源需要の動向を示す代表的な指標として用いている。

出所:米国センサス局(データセンター建設投資)、米国労働統計局(BLS、非住宅建設PPI)、米国商務省・経済分析局(BEA、情報処理機器投資)よりPGIMジャパン作成

 

内外金融政策見通し

  • 中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー価格の上振れリスクや、底堅い米インフレ指標を受け、米国金融市場ではFRBによる早期利下げ観測が後退している。加えて、パウエル議長の任期満了を控え、今後はウォーシュ次期議長の金融政策スタンスや市場とのコミュニケーションが一段と注目されやすい局面となろう。足元では利下げを急がず、インフレの収束度合いと金融環境の引き締まり具合を慎重に見極める姿勢が維持される可能性が高い。
  • 日本銀行は需給ギャップの推計方法を見直し、2022年以降、日本経済が一貫して需要超過の状態にあることを示した。堅調な春闘等を踏まえると、国内要因だけでも4月の利上げは十分に正当化されうる状況といえる。もっとも、中東情勢を巡る不透明感やグローバル金融市場の変動を理由に、4月会合で利上げが見送られるケースも想定される。ただし、その場合でも利上げ打ち止めとの解釈は広がりにくく、市場の関心は6月の利上げに向かう可能性が高い。

 

【図2】金融機関の貸出し態度と企業の資金繰り
金融機関の貸出し態度と企業の資金繰り
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金融機関の貸出し態度と企業の資金繰り

注:日銀短観の金融機関の貸出態度判断DI(「緩い」ー「厳しい」。%ポイント)。資金繰り判断DI(「楽である」ー「苦しい」。%ポイント)。影は景気後退局面。

出所:日本銀行、内閣府よりPGIMジャパン作成(2026年3月時点)

 

国債需給見通し

  • 4月以降、国債需給は超長期セクターを中心に改善が見込まれる。年度入りに伴い超長期国債の発行額は抑制されるほか、流動性供給入札の区分変更を受け、15年ゾーンの国債の発行も実質的に減少する可能性が高い。超長期ゾーンについては、市場インパクトを意識した発行配慮が相応に行われている状況と評価できる。仮に高市政権下で財政拡張や国債増発が生じる場合でも、増発は流動性の高い10年以下セクターが優先され、超長期への波及は限定的とみられる。
  • 日銀は、国債買入れ減額計画について、2026年6月の金融政策決定会合で中間評価を行う方針を示している。
  • 需要面では、金利水準の上昇や他の先進国対比で依然スティープなイールドカーブを背景に、海外投資家の円債需要は引き続き期待でき、需給面からの下支え要因となろう。

 

【図3】外国人投資家の超長期国債の年間買い越し額(兆円)と30年国債利回り(%)
外国人投資家の超長期国債の年間買い越し額(兆円)と 30年国債利回り(%)
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外国人投資家の超長期国債の年間買い越し額(兆円)と 30年国債利回り(%)

出所:日本証券業協会、BloombergよりPGIMジャパン作成(2026年2月時点)

 

国内債券市場

国債:2026年1-3月期の振り返りと4-6月期の見通し

  • 2026年1–3月期の日本国債市場は、政治・財政要因と金融政策を巡る思惑が交錯する中、金利変動の大きい展開となり、10年国債利回りは期間を通じて0.3%ポイント程度上昇した。1月は、衆院解散表明や消費税減税論を背景とした財政拡張懸念の高まりから金利が急上昇し、超長期金利は過去最高水準を更新した。日銀は政策金利を据え置いたものの、物価見通しの上方修正や反対票を伴う決定がタカ派的に受け止められ、追加利上げ観測が強まった。2月は、自民党の選挙勝利を受けて過度な財政拡張リスクが後退し、超長期ゾーンを中心に買い戻しが優勢となった。3月は、中東情勢を背景とした原油高や日銀の利上げ継続姿勢により金利は再び上昇基調に転じた。
  • 日銀の金融政策運営は、利上げの都度、マクロ経済や金融市場の反応を確認しつつ、現行の政策金利がなお緩和的な水準にあるかを評価するプロセスを基本とすると考えられる。金融政策の効果に伴うラグを考慮すれば、当面は半年に一度程度の利上げペースが妥当である。年央にかけてはCPIの基準改定等により、前年比インフレ率に一時的な下方バイアスがかかる可能性がある。もっとも、もともとCPIが一時的に2%を下回るシナリオが想定されており、日銀としてはそうした局面でも利上げ継続を正当化できるよう、基調的な物価や賃金、需給環境に関するデータの精査と情報発信を入念に進めていると考えられる。
  • 円債市場では日銀の利上げ継続と超長期セクターの需給環境改善を背景に、イールドカーブの緩やかなベアフラット化が中心的なシナリオとなろう。
  • 米国の中間選挙を控え、トランプ政権としては景気失速を回避したい思惑が強い一方、中東情勢を巡る不透明感は残る。原油価格が高止まりするリスクが残る中、エネルギーコストを通じて世界経済、ひいては日本の成長率に下押し圧力がかかる可能性がある。国内では、実質成長率が一時的に0%近辺まで減速するシナリオも視野に入る。もっとも、春闘は3年連続で良好な結果となっており、インフレが落ち着けば実質賃金の改善を背景に、個人消費を中心とした景気の底堅さは維持されると考えられる。
  • 財政面では、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」は、成長力の底上げを重視する政策運営として一定の評価を受ける一方、歳出拡大が継続する場合の中長期的な財政悪化に対する市場の警戒感は根強い。6月に策定される骨太の方針では、翌年度予算編成に向けた歳出の優先順位や財政運営の基本姿勢が示される見通しであり、その内容が市場の財政評価や金利形成にどのように反映されるかが重要な注目点となろう。

 

【図4】10年国債利回りの推移
10年国債利回りの推移
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10年国債利回りの推移

出所:Bloomberg(2026年3月31日時点)

 

【図5】国債イールドカーブ
国債イールドカーブ
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国債イールドカーブ

出所:日本相互証券(2026年3月31日時点)

 

クレジット:2026年1-3月期の振り返りと4-6月期の見通し

  • 国内社債スプレッドは前期比で1bp拡大、円建外債スプレッドは同2bp拡大した。クレジット市場は、年初から海外では米国によるベネズエラ侵攻や、国内では衆院選に向けての財政拡張の観測等による円金利の上昇などヘッドラインが多いなか、総じて安定的に推移した。2月には、AI脅威論が主に米国市場で懸念され、海外市場はスプレッドが拡大した。加えて、英住宅ローン会社の経営破綻による銀行セクターへの懸念も一部出るなど、総じてクレジット市場にネガティブな材料が多かった。国内では、衆院選を大勝した政権与党による財政政策への警戒感が残ったものの、長期金利は安定化し、クレジットスプレッドも安定的に推移した。3月は、中東情勢緊迫化を契機に金融市場全体が不安定な動きに終始した。原油・天然ガス価格の上昇や、原油由来の原材料・部品等の供給制約懸念を背景に、企業業績悪化やマクロ経済に対する影響が意識された。ただし、国内クレジットへの影響は限定的で、絶対金利水準の上昇に伴う利回りニーズもあり、クレジットスプレッドは比較的安定的な推移となった。

 

【図6】対国債スプレッド(bps)
対国債スプレッド(bps)
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対国債スプレッド(bps)

出所:野村総合研究所(2026年3月31日時点)

 

  • 国内社債の新発債発行額はややスローダウンしたが、依然過去最高水準にある。海外市場中心にヘッドラインが多かったものの総じて順調な発行状況となった。劣後債も野村ホールディングスや商工中金のAT1債、事業法人では三菱地所や東海カーボンが起債し、旺盛な需要が見られた。
  • 金利動向が社債需給に与える影響は引き続き大きいと思われる。日銀の利上げ局面がいつまで続くかという不透明感および財政拡大リスクへの警戒感は、スプレッド縮小の阻害要因となりうる。一方で、金利上昇に伴い投資家の利回り志向は一段と強まると考えられる。結果として、クレジット市場全体的に拡大圧力がかかったとしても調整幅は限定的にとどまり、スプレッドは緩やかな縮小が継続すると見込む。投資家需要は、金利のさらなる上昇リスクが比較的小さい中期ゾーン、特にスプレッドの厚い劣後債に向かいやすいと考えられる。
  • 本邦社債発行体の信用力はおおむね堅調に推移すると見ている。インフレ上昇率が鈍化し実質賃金のプラス転換が見込まれるなど国内景気の緩やかな回復が続くなか、企業業績は、米関税コストの価格転嫁・製造業の景況感のボトムアウトなどによりさらなる改善が予想される。業績改善に支えられてキャッシュフロー創出力は高水準を維持、有利子負債の増加を抑制するため、企業の財務健全性は良好な状態が続くと見られる。リスク要因としては、マクロ的には世界経済の減速、地政学リスクの高進、著しい国内金利の上昇や為替円安の進行といった国内金融環境の悪化など、ミクロ的には現金保有増やキャッシュフロー創出力の拡大を背景にした、M&Aを含む大型投資が挙げられよう。東証要請による「資本コストや株価を意識した経営」が昂進するようだと、財務バランスの変化を通じてクレジット・ネガティブに働く点も付言しておきたい。 

 

【図7】年初来トータルリターン
年初来トータルリターン
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年初来トータルリターン

出所:野村総合研究所(2026年3月31日時点)

PGIMJ128408 5386128-20260414