四半期レポート:国内債券

日本経済・債券市場展望 2026年1-3月期

2026年1月21日

エグゼクティブ・サマリー

日本経済

  • 日銀は中立金利の不確実性を前提に半年ごとの利上げを続け、景気・物価・金融環境を都度点検しつつ政策を調整するだろう。低いインフレ実績の下で行われる27年春闘がインフレ・レジーム定着の試金石となる。
  • 財政面では、高市政権が26年度予算で拡張ペースを抑制した一方、衆院選の結果次第で財政運営が大きく変わる不確実性がある。

国内債券市場

  • 日銀の買入減額と財務省の短期化方針により緩やかなベアフラットがメインシナリオとなるが、ビハインド・ザ・カーブ懸念が生じる局面ではベアスティープが発生しやすい。
  • クレジット市場では、金利動向の影響を受けつつも需給・信用力の堅調さに支えられてスプレッドが底堅く推移し、投資家需要が中期ゾーンや劣後債に向かいやすい環境が続くと見込む。

注目の経済指標・イベント

国内政治経済は安定期に移行

  • 米国経済は、AI関連投資が堅調で、消費も雇用者減と資産効果が相殺する中で成長が持続すると見込まれる。
  • 国内では、関税によって先延ばしされていた設備投資計画の実施が期待される。26年春闘が3年連続で良好な結果となれば、消費も底堅く推移するだろう。ただし、実質賃金の累積変化はようやく底離れし始めた段階に過ぎず、消費の増加ペースは緩やかなものにとどまりそうだ。
  • 高市政権の成長戦略は、人手不足による供給制約に加え、企業の貯蓄が中小企業に滞留していること(図1)もあって、マクロ的な投資促進にはつながりにくいと考えられる。特定産業を対象とした振興策として捉えるべきだろう。
企業の現預金保有比率
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企業の現預金保有比率

 

内外金融政策見通し

  • 米FRB新議長がインフレ高止まりと雇用軟化のどちらに重きを置くか注目されるものの、3%付近まで利下げしたのち政策金利を据え置く公算が大きい。
  • 日銀は、中立金利が分からないことを前提に、利上げのたびにマクロ経済や金融環境の反応を点検し、現行の金利水準がなお緩和的かどうかを確認するプロセスを繰り返すと考えられる。半年に一度の利上げが続くとの見方が妥当だろう。
  • 年央にはCPI前年比が一時的に2%を割り込む局面が予想され、インフレ期待が後退しないかどうかが懸念材料となる(図2)。26年春闘が企業収益の影響を受けないのと同様に27年春闘がインフレ実績の影響を受けないかどうかは、家計や企業の物価観がどのように変化し、インフレ・レジームが定着したかを判断する試金石となる。
経済主体別の合成予想物価上昇率
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経済主体別の合成予想物価上昇率

 

国債需給見通し

  • 高市首相は25年度補正予算成立後の長期金利上昇を受けて、26年度予算では財政拡張スタンスを緩めたように見える。
  • 年後半には、成長戦略の策定とともに補正予算が編成される可能性があるものの、債務GDP比率が上昇しない範囲の規模にとどまるだろう。ただし、衆院選の結果次第では財政運営が大きく振れる余地もある。
  • 日銀の国債買入減額が継続し、財務省が発行年限の短期化を進める中、今後12ヵ月のネット発行額は16年以下に集中している(図3)。長期フォワード金利は欧米と遜色ない水準にあり、16年超セクターは海外需要が下支えすると見込まれる。
国債の年限別ネット発行額
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国債の年限別ネット発行額

 

国内債券市場

国債:2025年の振り返りと2026年の見通し

  • 2025年の長期金利は、4月の関税ショック時に大きく低下したものの、年間では上昇トレンドを維持した。日銀は米関税の影響を見極めるため利上げサイクルを一時停止したが、12月に再開した。
  • 米関税の影響を乗り越え、国内外経済が緩やかな成長を続けるとの前提に立てば、日銀は半年に一度のペースで利上げを進める公算が大きい。需給動向も踏まえると、円債市場の中心的なシナリオは緩やかなベアフラットであり、その流れは2026年も持続すると見られる。
  • 中立金利については、推計精度の向上に固執するよりも、利上げのたびに経済・金融環境の反応を点検しながら政策判断を進める戦略が妥当だ。政策ラグを考慮すれば、利上げペースは自ずと緩やかにならざるを得ず、米景気の過熱や円安、大型補正予算といった上振れリスクが顕在化しても、利上げの加速は限定的だろう。この場合は、市場がビハインド・ザ・カーブ懸念を意識しやすく、金利カーブはベアスティープ方向に振れやすい。
  • 下方シナリオとしては、米国で失業率が悪循環的に上昇し大幅利下げに至るケースで、円高や基準改定といったテクニカル要因が重なればCPI前年比が1%まで低下することも考えられる。さすがに物価の基調は変わらないと主張するのは難しく、27年春闘を確認するまでは、日銀は政策金利を据え置く展開が続きそうだ。
10年国債利回りの推移
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10年国債利回りの推移
国債イールドカーブ
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国債イールドカーブ

 

クレジット:2025年の振り返りと2026年の見通し

  • 国内社債スプレッドは年間で2bp拡大、円建外債スプレッドは同12bp縮小した。トランプ政権による相互関税が市況を揺さぶった。4月初頭の相互関税発表後、市場はリスクオフ優勢となり、金利のボラティリティ上昇も加わりスプレッドは拡大傾向となった。その後、米中間の関税合意、日米間の通商交渉妥結を経てセンチメントは改善、スプレッドは一転タイト化した。高市新政権誕生後、財政拡大への警戒感から金利上昇圧力は年後半にかけてさらに強くなったが、金利上昇リスク抑制の観点から特に中短期ゾーンが投資家に選好され、クレジットスプレッドへの影響は限定的で、スプレッドは底堅く推移した。
対国債スプレッド(bps)
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対国債スプレッド(bps)
  • 2025年の国内社債の新発債発行額は前年比6.7%減となったが、依然過去最高水準にある。金利先高観による前倒し発行が活発化、投資家の需要が強い中期ゾーンの発行が多く見られた。劣後債は既発債の借り換え需要が牽引役となり、日本航空やソフトバンクグループなどの大型起債が見られた。
  • 金利動向が社債需給に与える潜在的影響は引き続き大きいと思われる。日銀の利上げ局面がいつまで続くかという不透明感および財政拡大リスクへの警戒感は、スプレッドタイト化の阻害要因となりうる。一方で、金利上昇に伴い投資家の利回り志向は一段と強まると考えられる。結果として、クレジット市場全体的にワイド化圧力がかかったとしても調整幅は限定的にとどまり、スプレッドは緩やかなタイト化が継続すると見込む。仮に既述のリスク要因が早期に減退した場合は、タイト化の追い風となろう。投資家需要は、金利のさらなる上昇リスクが比較的小さい中期ゾーン、特にスプレッドの厚い劣後債に向かいやすいと考えられる。
  • 本邦社債発行体の信用力はおおむね堅調に推移すると見ている。インフレ上昇率が鈍化し実質賃金のプラス転換が見込まれるなど国内景気の緩やかな回復が続くなか、企業業績は、米関税コストの価格転嫁・製造業の景況感のボトムアウトなどによりさらなる改善が予想される。業績改善に支えられてキャッシュフロー創出力は高水準を維持、有利子負債の増加を抑制するため、企業の財務健全性は良好な状態が続くと見られる。リスク要因としては、マクロ的には世界経済の減速、地政学リスクの高進、著しい国内金利の上昇や為替円安の進行といった国内金融環境の悪化など、ミクロ的には現金保有増やキャッシュフロー創出力の拡大を背景にした、M&Aを含む大型投資が挙げられよう。東証要請による「資本コストや株価を意識した経営」が昂進するようだと、財務バランスの変化を通じてクレジット・ネガティブに働く点も付言しておきたい。 
年初来トータルリターン
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年初来トータルリターン

PGIMJ125937 5137609-20260120