人工知能(AI)が実験的な段階から産業規模での導入へと移行する中、次世代型のデータセンターを稼働させるために必要な電力需要によって、公益事業、電力会社、インフラ、テクノロジーなどの広範な領域で魅力的な投資機会が生み出されていると我々は考えている。
約20年にわたり、米国の電力需要は概ね横ばいで推移してきた。家電製品のエネルギー効率性の向上、製造業の海外移転、老朽化した石炭火力発電から相対的に安価な天然ガス火力発電への転換により、電力会社が新たな発電所を建設する必要がほとんどない環境がもたらされた。一部の市場では、電力の供給過剰によって原子力発電所を含む一部の発電設備が閉鎖に追い込まれることさえあった。しかし、AIの普及によってこうした構図は急速に変化しつつある1。
AIデータセンターの登場により、長期にわたる追加的な電力需要の増加要因が生じたと我々は考えている。現在では、長期契約、大規模な用地の確保、ハイパースケーラーによる多額のインフラ投資など、需要の持続性を裏付ける確かな兆候が現れている。
その結果、AI向け電力需要は、規制対象の電力会社にとって複数年の投資サイクルを支えるだけの持続力があると見られ、送電、変電所、送配電網の近代化、オフグリッド技術への投資機会を生み出している。電力会社は自社システムへの投下資本額に応じて規制当局が認める一定の収益を得るため、需要の伸びが高まる環境は利益成長の加速を後押しする可能性がある。同様に重要な点として、大手のデータセンター顧客が、老朽化した送配電網で従来から必要とされていた改修費用を負担する可能性があり、固定費を幅広い顧客基盤に分散させることで、時間の経過とともに料金負担への圧力を和らげる可能性がある。
多くの電力を必要とする要因は、単にデータセンターの建設が増加していることではなく、データセンター内で行われる計算処理の高密度化にある。従来型の企業向けデータセンターは、多くの場合には1ラック当たり概ね5~10キロワットで稼働していたが、これがクラウド・データセンターでは一般的に15~30キロワットにまで上昇した。先端GPUを中核とする現行世代のAIシステムでは、1ラック当たり100キロワットを超える電力が必要となる場合があり、今後の設計では計算処理のさらなる高密度化が進むと予想されている。
同時に、AIクラスター(計算処理基盤)の規模も拡大している。かつて大規模データセンターと言えば、50~200メガワットの電力を必要とする施設を意味していた2。 今日では、ハイパースケーラーはギガワット規模のキャンパスを検討している。1ギガワットの電力需要は、約100万世帯が必要とする電力にほぼ相当する。我々は、こうしたデータセンターの規模拡大こそが、これまでAI分野では相対的に注目されてこなかった電力コストが戦略上の中核的なボトルネックに変化した理由になっていると考えている。
半導体やシステムの効率性向上は重要だが、短期的には需要面の課題を完全には解消できない可能性がある。GPUは世代が進むごとに1ワット当たりの計算能力が向上すると予想されるが、AIは高度化するモデルの学習だけでなく、学習済みモデルを日常的に利用して大規模に出力を生成する「推論」を支えるためにも膨大な計算能力が必要となることから、全体的な需要は増加し続ける可能性がある。実際に、利用の加速が効率性向上の効果を相殺していると見られ、このことは、安価または効率的な計算処理によって電力消費が減るのではなく、むしろ増加する可能性があるという考え方と整合する。
問題は、最終的に十分な電力を確保できるかではなく、それを十分なスピード感で供給できるかにある。大規模な原子力発電プロジェクトは通常、建設に長い年月を要し、これまでもコスト超過や操業遅延に直面してきた。ガス火力発電所はより短期間で建設できるものの、タービンの受注残が制約となっており、新たな発電能力が利用可能になるのは2030年以降となる可能性がある。また、送配電網への接続、許認可要件、地域当局の承認がさらに複雑さを加えている。
そのため、今後も問題解決に向けた選択肢が広がる可能性がある。既存の石炭・ガス火力発電所の稼働率が高まり、クリーンで信頼性の高い電源が利用可能になるまで、一部の石炭火力発電所の廃止が延期される可能性もある。再生可能エネルギーと蓄電池は相対的に迅速に導入できるが、24時間安定した電力を常に供給できるわけではない。レシプロエンジン、航空転用型ガスタービン、燃料電池、その他のオンサイト発電などのモジュール型およびビハインド・ザ・メーター(自家発電)型の解決策も、早期に電力を確保できる可能性があることから普及が進みつつある。
こうした「あらゆる選択肢を活用する」アプローチは、投資家にとって重要である。AI向け電力需要によって生み出される勝者は一社にとどまらない。規制対象となっている電力会社、独立系発電事業者、送配電網設備、冷却技術、建設、特殊な電力ソリューションに至るまで幅広い投資機会が存在する。我々は、最も深刻なボトルネックを解消する事業を展開している企業が、最も明確な恩恵を受ける可能性があると見ている。
グロース投資家にとって、AI主導の電力需要の急増は、成長ペースが大きく加速する重要な転換点である。従来、多くのグロース投資家のポートフォリオは、AIエコシステムの中でも消費者向けテクノロジー、ソフトウェア、半導体、クラウド・インフラに焦点を当ててきた。しかし、AIモデルの進化によってGPUの開発ロードマップが前倒しされる中、計算処理の世代が進むごとに、これまで以上に多くの物理的インフラと電力が必要になることが明らかになった。この認識により、投資機会は従来バリュー志向とみなされてきた分野にも広がった。
既存の発電設備を保有する独立系発電事業者、特に競争的な電力市場で原子力・ガス火力発電の資産を保有する事業者は、不足している電力供給を迅速に補うことができたため、早くから恩恵を受けた。ハイパースケーラーとの長期契約は需要拡大の見通しを裏付け、バリュエーションの上昇を支えた。しかし足元では、電気料金の負担感、規制上の取り扱い、送配電網の信頼性を巡る懸念から不透明感が生じている。こうした中、政策当局と送配電網の運営者は、データセンターが追加の発電能力を確保するか、電力システムが逼迫した際に何らかの電力使用制限を受け入れることを求めるルールの整備を進めている。
規制対象の電力会社の投資機会は、独立系発電事業者とは性質が異なる一方で、持続的なものとなる可能性がある。大口顧客に追加インフラ費用の負担を求める料金体系が導入されれば、データセンターの電力負荷は設備投資と利益成長を支えることができる。いくつかの地域では、電力会社が一般家庭の利用者を保護しつつ、ハイパースケーラーによる開発も可能にする特別料金制度を導入している。適切に運用されれば、データセンター建設による電力需要の増加は、既存の電力利用者にとって負担となるのではなく、この仕組みを通じて電力システム全体への投資を生み出す源泉となり得る。
今や電力需要はインフラ面の問題であると同時に、政治的な課題にもなっている。競争が激しい電力市場では、電力価格の上昇を受けて、データセンターが一般家庭や中小企業の電気料金を押し上げているとの懸念が高まっている。新たな発電能力への投資を促すには電力価格の上昇が必要となる可能性がある一方、特に家庭向け電気料金が既に上昇している州において、選挙を通じて選出された政治家は電気料金の負担感を強く意識している3。
地域社会の理解を得られないことも、新たな制約要因となり得る。データセンターは、土地利用、水の消費、騒音、景観への影響を巡って地域社会からの反発に直面する場合がある。ハイパースケーラーは、送配電網の改修費用を負担することは、こうした問題の解決に向けた出発点にすぎないと認識しつつあるようだ。地域社会の支持を得るには、地域への投資、税収、人材育成、学校や公共サービスへの支援など、地域社会への直接的な恩恵を示す必要があるだろう。こうした恩恵が具体的になるほど、地域社会はデータセンターを外部からの侵入者ではなく、経済的な資産だと捉える可能性が高まる。
投資家にとって、こうした政治的な動きは導入のペースを遅らせる可能性はあるものの、必ずしも投資サイクル自体を損なうわけではない。実際、規制上の摩擦によって建設のペースが緩やかになれば、投資期間が長期化し、短期間で過熱するリスクの低減につながる可能性がある。重要なのは、政策の枠組みによって、信頼性、電気料金の負担感、AIインフラの戦略的重要性のバランスを取れるかどうかである。
AIインフラの拡充は、発電以外の分野にも投資機会を生み出している。中でも電気インフラは最も顕著な分野の一つである。電力会社とデータセンター開発事業者が電気インフラの供給確保を巡って競合する中、変電所、変圧器、開閉装置、送配電設備および関連部品では、納期が長期化している。冷却技術も、大きな変化が生じている重要な分野の一つである。ラック密度の上昇に伴い、従来型の空冷方式の効果は低下しており、業界では液冷やその他の高度な熱管理ソリューションへの移行が進んでいる。
労働力は、最も議論が進んでいないボトルネックだろう。データセンター、変電所、送配電線、発電所の建設には熟練した電気技師、エンジニア、建設労働者が必要となるが、これらの職種の多くは既に人手不足に直面している。半導体やソフトウェアだけではなく、物理的なインフラもAIの処理能力をいかに早く高められるかを左右する。
AI向け電力需要は、投資家がテクノロジーのバリューチェーンをどのように捉えるべきかを塗り替えつつあると我々は見ている。半導体とクラウド・プラットフォームは引き続きAIを巡る中心的な投資テーマだが、次の局面では電力、送配電網の容量、冷却技術、物理的な設備投資への依存度が一段と高まる可能性がある。それにより、AI投資の第1段階よりも広範かつ分散された投資機会が生まれる可能性があると我々は考えている。
我々は、持続的な需要が見込まれ、供給は制約されており、企業が価格決定力または規制に基づく収益の予見性を有する領域に最も魅力的な投資機会が存在すると考えている。規制対象の電力会社は、設備投資の拡大と需要増加の追い風を受ける可能性がある。独立系発電事業者は、既存の発電設備と長期契約が収益拡大に寄与し得る。電力設備や冷却システムの供給企業は、インフラ整備でのボトルネックの恩恵を享受する可能性がある。ハイパースケーラーが電力の早期確保と柔軟性を求める中、ビハインド・ザ・メーター(自家発電)型およびモジュール型の電力供給事業者はシェアを拡大する可能性がある。
これと同時に、大きなリスクも存在する。需要見通しが過度に強気であったことが判明する可能性や、規制によって収益が制限される可能性、地域社会の反発によってプロジェクトが遅延する可能性、技術の効率性向上により電力需要の伸びが変化する可能性がある。しかし我々は、大きな方向性は明確であり、AIはもはやデジタル・インフラだけのテーマではなく、エネルギー・インフラのテーマでもあると見ている。
1. 出所:IEAによる"Energy supply for AI"
2. 注記:ワットは電力の単位。1メガワットは100万ワット、1ギガワットは10億ワット、すなわち1,000メガワットに相当する。
3. 出所:イェール大学による"The Politics of AI: Will Bipartisanship Last or Is Polarization Inevitable?"
著者
Abhi Kamerkar、マネージングディレクター、ジェニソン
Insoo Kim, CFA、マネージングディレクター、ジェニソン
Meagan Speight、マネージングディレクター、ジェニソン
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