米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を据え置いたが、会合後に示されたハト派的な姿勢は、市場におけるインフレ抑制への信認を低下させた可能性がある。PGIMのチーフ・グローバル・エコノミスト兼グローバル・マクロ経済調査責任者であるダリープ・シンは、今回のFOMCを受けて、前述の見解を示した。現在の政策姿勢ではインフレ圧力を十分に抑えられない可能性があることを指摘しており、そして、2026年末までに計0.75%の利上げが必要になるとの見方を維持している。
1.前日の会合で政策金利の据え置きが9対3で決定されたことは、驚きではなかった。これはまさに我々の予想どおりであった。
2.しかし、多くの市場参加者も同様であったと考えているが、そのハト派的なトーンには驚かされた。特に、名目金利と実質金利の上昇が、少なくとも部分的には政策金利の引き上げに代わり得るとの示唆が印象的であった。
3. 公平を期せば、この主張にも一定の根拠はある。市場金利の上昇は、金利感応度の高い投資を減速させ、資産効果を弱める。
しかし、市場金利の上昇は、政策金利の完全かつ持続的な代替手段にはならない。ジェレミー・スタインの表現を借りれば、政策金利は、レバレッジ、リスク選好、変動金利などを通じて、実体経済の「隙間にまで入り込む」からである。
4. 前日の市場の動きがどのような性質のものであったかも重要である。記者会見中およびその後の市場反応は、FRBがインフレ抑制に取り組む決意に対する信認の低下によって引き起こされたことが明白であろう。これは重い代償であり、同時に、支払う必要のなかった代償でもある。
5. 欠けているのは、FRBが物価安定へのコミットメントを実現するため、どのような戦略を取るのかについての明確な説明である。市場は、十分な説明を伴わない主張に対して、明らかに忍耐を失いつつある。
6. 未回答のまま残されている多くの疑問には、以下が含まれる。
現在の政策姿勢の下で、高止まりしているインフレ率の持続的な低下が進むと考える根拠は何か。
実証的に金利感応度が低いAI関連の設備投資、資産効果、財政支援によって押し上げられている旺盛な需要が、なぜ減速すると考えられるのか。
エネルギー不足、繰り返される関税措置、労働力人口の縮小などの供給側ショックは、なぜ重なり合うのではなく、収束に向かう可能性の方が高いのか。
企業借入額やIPOの規模が過去最高水準に達し、家計の純資産・所得比率も過去最高に近い水準にある中で、現在の政策姿勢を緩和的ではないとする根拠は何か。これらはいずれも、国内需要を押し上げている。
他の主要中央銀行と比べて突出してハト派的な姿勢を取ることで、ドル安と輸入インフレの上昇を招く状況に、FRBはいつまで耐えられるのか。
7. 特に懸念しているのは、今後もショックが繰り返されるという現実が認識されていないことである。
先端技術における支配的な地位をめぐる競争は、AI関連の設備投資ショックを引き起こしている。防衛力の増強や産業政策の資金を確保するため、財政優位の傾向も強まっている。さらに、関税、輸出規制、制裁を通じ、供給網上の要衝を利用または制約する経済戦争が展開されている。国内のポピュリズムにも一部起因する労働供給の縮小も進んでいる。
これらは、新たな地経学的レジームを構成する、相互に関連した力である。
こうした力を正確に測定することは容易ではない。しかしFRBは、金融政策が一段と引き締められない限り、この新たなレジームは全体としてインフレを引き起こす方向に作用すると推測し判断することができるし、そうすべきである。
8.前日の会合が残した長期的な影響は、FRBが信認を回復するために必要となるコストが、会合前よりも高くなったことである。
経済指標が突然大幅に悪化するか、地政学的緊張が持続的に緩和されない限り、市場が9月の0.50%利上げについて無視できない確率で織り込み始めても、驚きはない。
前者は常に起こり得るものの、その可能性は低い。後者の可能性はさらに低い。イラン情勢は戦略的な泥沼であり、中国および戦略石油備蓄によってホルムズ海峡を巡るショックをいつまでも吸収できるわけではない。
2026年の残りの期間において、引き続き計0.75%の利上げを予想している。
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