世界金融危機後の期間の大半において、クオリティ・グロース投資は機関投資家のポートフォリオで特別な位置を占めてきた。その投資の考え方は明快で、持続可能な競争優位性、高い利益率、高水準の資本収益率、安定した継続収益、予測可能なキャッシュフローを備えた企業に投資するというものである。長期的には、優れた事業経済性がもたらす複利効果が、短期的な市場のボラティリティを凌駕すると考えられてきた。
このアプローチには多額の投資資金が流入した。クオリティ・グロース戦略は、多くの従来型のグロース戦略と比べ、成長性、底堅さ、低いボラティリティという魅力的な組み合わせを提供してきた。多くのアセットオーナーにとって、クオリティ・グロース戦略は株式配分において「安心して投資できる」アプローチとなった。
しかし近年、興味深い変化が生じているように見える。歴史的にクオリティ・グロースの特性を有してきた多くの代表的なセクターや企業では、伝統的なクオリティ特性の多くについては維持されている一方で、成長率は大きく鈍化している。
その結果、投資家にとっては「クオリティとグロースの関係は変化したのか?」という重要な疑問が生じている。
過去10年の大半の期間において、クオリティとグロースはしばしば表裏一体の関係にあった。市場で最も力強い成長を遂げた企業の多くは、高い利益率、高水準の資本収益率、安定した継続収益、安定した利益、資本効率の高いアセットライト型のビジネスモデルなど、伝統的にクオリティ投資とも関連性のある特性も併せ持っていた。
こうした企業の成功は偶然ではなかった。ソフトウェア企業、消費者向けフランチャイズ企業、一部のヘルスケア企業は、力強い長期的な追い風の恩恵を受けると同時に、伝統的なクオリティ投資の特性を数多く備えていた。高い成長は利益率や資本収益率を押し上げ、その高い収益性が、イノベーションや市場でのリーダーシップ、競争優位性の維持に必要な資金を生み出した。
この組み合わせが力強い好循環を生み出した。多くの場合、優れた事業経済性を持つ企業のビジネスは時間の経過とともに一段と強固になり、クオリティとグロースの両面での優位性を高めた。その結果、クオリティは魅力的な成長機会を見出すための有効な視点として、ますます重視されるようになった。多くの面で、クオリティは将来の成長を見極める有効な指標として機能した。市場で最も成功した企業が両方の特性を備えていることが多かったため、投資家は必ずしもクオリティとグロースのどちらかを選ぶ必要がなかった。
しかし最近では、その関係は以前ほど単純ではなくなっている。歴史的にクオリティ・グロースの特性を有してきた代表的なセクターの一部では成長が鈍化する一方、現在最も魅力的な成長機会の多くは、伝統的なクオリティの枠組みとは大きく異なる特性を示している。
上図では、円の大きさが各四半期末時点におけるMSCI ACWIクオリティ指数の構成比を表している(円が大きいほど直近の時点、円が小さいほど過去の時点を示す)。図表が示す通り、過去3年間でクオリティ指数は徐々にグロース特性を失い、バリュー寄りの特性を強めてきた。言い換えれば、クオリティ指数からは成長性が徐々に失われており、これまでの成長実績を重視してきた運用マネージャーは、その過程において将来の成長機会へのエクスポージャーを低下させてきた可能性がある。
投資機会の変化は、部分的に投資対象となる企業の特性そのものが変化していることによってもたらされている可能性がある。
歴史的に、市場で最も成功したグロース企業の多くは、ネットワーク効果、安定した継続収益、単位当たりの収益性が高いことから恩恵を受ける、資本効率の高いアセットライト型の企業であった。ソフトウェア企業、インターネット・プラットフォーム、消費者向けフランチャイズ企業、一部のヘルスケア企業は、比較的少額の設備投資で豊富なキャッシュフローと高い資本収益率を生み出すことが多かった。
現在の投資環境は、当時とは大きく様相を異にしている。
生成AIインフラの構築により、半導体、データセンター・インフラ、ネットワーク機器、電力システム、電気部品、冷却技術、その他の基盤技術に対する大幅な需要拡大がもたらされている。これらの事業は、世界経済全体における人工知能(AI)の急速な導入を支える上で極めて重要である。
重要なのは、これらの企業の多くが、過去10年を牽引した企業とは大きく異なる姿をしていることである。多くの場合、これらの企業は資本集約的で、従来型のソフトウェア企業よりも利益率が低く、将来利益の予見可能性も低いように見える。また、多くの企業は、短期的な収益性を最大化するのではなく、積極的な成長投資を優先している。
伝統的なクオリティ指標は、既に経済的な成熟段階に達し、持続的な収益力を有する企業を見極めるために開発されたものである。安定期においては、これらの指標は極めて有効となり得る。しかし、大きな技術変革の局面では、足元の収益性を最適化するのではなく、将来の成長を獲得するために多額の投資を行う企業に、最も魅力的な投資機会の一部が生まれる可能性がある。
現在のAI投資サイクルは、こうしたダイナミズムを示す好例である。現在生み出されている付加価値の多くは、AIの導入を支える物理インフラの領域で起きている。データセンターには、半導体、ネットワーク機器、電気システム、電力管理、冷却ソリューション、その他の基盤技術が必要となる。こうしたソリューションを提供する企業は、伝統的なクオリティ指標で必ずしも高い評価を得るとは限らないものの、市場では最も力強い長期的な成長ドライバーの恩恵を受けている。これはクオリティの重要性を損なうものではない。むしろ、単一の枠組みに過度に依存することの限界を浮き彫りにしている。伝統的なクオリティ指標は依然として有用な手段だが、テクノロジー、インフラ、設備投資の大きな変化から最も恩恵を受ける企業を、十分に捉えきれない可能性がある。
そのため、主に伝統的なクオリティ指標に依拠する投資家は、現在進化しつつある投資機会の一部を過小評価している可能性がある。
成長の鈍化は、他の要因と無関係に単独で生じたわけではない。歴史的にクオリティ・グロースの特性を備えた企業を数多く生み出してきたセクターの多くで、近年、成長率が大きく鈍化している。
消費者向けフランチャイズ企業は、その一例である。過去20年の大半にわたり、グローバルな消費者ブランドや高級ブランドは、中国の消費者の台頭と世界的な需要拡大の恩恵を受けてきた。近年では、中国の成長鈍化、消費行動の変化、高い貯蓄率、不動産市場の低迷により、かつては強力だった成長の原動力が弱まっている。これらの企業の多くは、引き続き強いブランド力、魅力的な利益率、堅調なキャッシュ創出力を備えているものの、その成長見通しは以前ほど魅力的ではなくなっている。
企業向けソフトウェアは、別の課題に直面している。長年にわたり、ソフトウェア企業は、継続的な収益、高い利益率、力強いキャッシュフロー、魅力的な資本収益率という理想的な特性を兼ね備えていた。生成AIの登場により、従来型のソフトウェアのビジネスモデルの持続性と長期的な成長見通しを巡る不確実性が生じている。多くのソフトウェア企業は依然として質の高い企業だが、将来の成長率が過去に達成した水準に匹敵し得るのか、投資家は次第に疑問視するようになっている。
ヘルスケアもまた、伝統的にクオリティ投資の特性とされる収益性、安定性、資本収益率を備えた企業を求める投資家にとって、より難しい投資対象となっている。規制面の圧力、薬価や診療報酬を巡る懸念、政策面での監視強化が、成長期待を抑制している。
根本的な要因はセクターごとに異なるものの、結果は驚くほど似通っている。かつて強力な構造的成長ドライバーの恩恵を受けていた企業が、成長鈍化、需要を巡る不確実性の高まり、競争圧力の激化に直面するケースが増えている。重要なのは、これらの企業は投資対象としての魅力を失ったわけでも、クオリティ特性を失ったわけでもないという点である。むしろ、過去10年を特徴付けた成長の原動力が、次の10年を特徴付ける成長の原動力と同じであると投資家はもはや想定できないことを示唆している。
これは、クオリティ・グロース投資に内在する重要なジレンマを浮き彫りにしている。
クオリティ指標の多くは、本質的に過去の実績に基づくものである。これらは、過去の収益性、資本収益率、利益の安定性、キャッシュ創出力など、企業がこれまでに達成してきた実績を測定するものである。一方、グロースは本質的に将来を見据えるものであり、将来の需要、市場機会、競争上のポジション、利益成長の可能性などが反映される。安定期には、クオリティとグロースは相互に補強し合うことが多い。しかし、大きな技術的あるいは経済的変化が生じる局面では、両者が乖離することがある。
これは、伝統的にクオリティ投資と結び付けられてきた特性をまだ備えていない業界に、新たな成長機会が生まれる場合に特に当てはまる。インフラの構築、市場シェアの拡大、新興技術におけるリーダーシップの確立に向けて多額の投資を行う企業は、長期的な成長見通しが改善しているにもかかわらず、伝統的なクオリティ指標では魅力が乏しく見える可能性がある。
これはクオリティ投資の失敗ではない。むしろ、クオリティとグロースは同じものではないという点を再認識させるものである。
クオリティは、成功する投資において今後も重要な要素である。強固な競争優位性、魅力的な資本収益率、規律ある資本配分を備えた企業は、今後も長期にわたり価値を創出し続けると考えられる。
しかし、クオリティがそのまま成長性を意味するわけではない。過去10年にクオリティを定義した特性が、次世代のグロース分野の牽引役を見極める特性と同じであるとは限らない。
我々は、グロースが引き続き長期的な株式リターンの主たる原動力であると考えている。クオリティはグロースを支えるべきものであり、それに取って代わるものではない。市場が進化し、新たな成長の原動力が生まれる中、投資家は過去の成功を特徴付けた特性だけに依存するのではなく、将来の成長がどこにあるのかを継続的に見直す必要がある。
パラダイムの転換期は、歴史的にリスクと投資機会の両方を生み出してきた。前サイクルを特徴付けた特性に囚われ続ける投資家は、新たな牽引役を見極めることに苦戦する可能性がある。一方、伝統的な枠組みの先に目を向ける投資家は、新たな成長の原動力が広く認識される前に、それを発見できる可能性がある。
課題は、クオリティを放棄することではなく、投資機会の範囲が進化するにつれて、将来の成長に結び付く特性も変化し得ると認識することである。
多くの投資家は、現在のクオリティ企業を見極めることに注力している。我々はむしろ、将来のクオリティ企業となり得る企業を見極めることが重要だと考えている。
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