四半期レポート:国内債券

日本経済・債券市場四半期見通し 2026年10-12月期

2026年10月19日

エグゼクティブ・サマリー

 

日本経済
  • 中東紛争に伴うエネルギー問題など課題は多いものの、ファンダメンタルズは堅調である。AI関連投資、政策支援、緩和的な金融環境が下支えし、日本経済は拡大基調を維持するとみる。
  • 原油高、円安、AI関連需要を背景に企業物価は高い伸びが続き、価格上昇圧力は消費者段階にも波及し始めている。物価が2%の目標を上回って推移するリスクに留意が必要な局面にある。
  • AIは研究の最前線で成果を上げ始めており、今後はフィジカルAIなどを通じて現実の経済へのさらなる波及が期待されるが、普及のペースや経済への影響の予測には大きな幅がある。

 

国内債券市場
  • 日銀は段階的な利上げを続け、2027年前半に政策金利は1.75%に達するとみている。政策金利が中立金利の推計レンジに入る中、今後の政策判断では、現在の金利水準が実体経済に対して緩和的か引き締め的かという「金融環境の評価」が中心的な論点になる。
  • 国債市場は当面、もみ合いを予想する。堅調な企業業績、欧米の利上げ、2027年度予算案や国債発行計画をめぐる財政懸念は金利上昇要因だが、その多くはすでに相場に織り込まれているとみる。
  • クレジット市場では、金利のボラティリティ上昇や海外クレジット相場の軟化が調整要因となり得るものの、発行体のファンダメンタルズは総じて底堅く推移しており、緩やかなスプレッドタイト化を見込む。

注目の経済指標・イベント

 

AI:研究から現場へ
  • AIの能力は急速に高度化しており、研究レベルの数学問題での正答率は急上昇している(図1)。未解決だった数学の問題をAIが解く事例も現れ始めた。2026年5月には、ハンガリーの数学者エルデシュが提起した未解決問題のうち9件をAIが解き、その証明の正しさをコンピューターで確かめた例が報告されている。
  • AIの役割は、情報を分析・判断する段階にとどまらず、その判断に基づいて現場で実際に作業を担う段階へと広がり始めている。ロボットなどを通じて周囲の状況を捉えながら自律的に動作するフィジカルAIは、まだ普及の初期段階にあるが、製造や物流をはじめ幅広い分野での活用が見込まれる。人手不足が深刻な日本にとって、生産性を高め、成長力を押し上げる有力な手段となることが期待される。ただし、普及のペースや経済への影響の予測には大きな幅がある。
図1:研究レベルの数学問題でのAIの正答率(FrontierMath)
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出所:Epoch AI よりPGIMジャパン作成 (2026年9月時点) 注:FrontierMathは、米国の非営利研究機関Epoch AIが作成した、AIの数学能力を測るテスト。OpenAIの資金提供を受けて開発された。数学者が作った未公表の問題で構成される。大学学部上級から若手研究者レベルの295問について、各時点までに公表されたAIモデルの最高正答率を示す。
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出所:Epoch AI よりPGIMジャパン作成 (2026年9月時点) 注:FrontierMathは、米国の非営利研究機関Epoch AIが作成した、AIの数学能力を測るテスト。OpenAIの資金提供を受けて開発された。数学者が作った未公表の問題で構成される。大学学部上級から若手研究者レベルの295問について、各時点までに公表されたAIモデルの最高正答率を示す。
インフレ圧力が強まる中、金融環境はなお緩和的
  • 日本経済は、中東紛争に伴うエネルギー問題などの課題を抱えながらも、ファンダメンタルズは堅調である。原油高や円安に加え、AI需要の拡大に伴うメモリや銅などの価格上昇も企業物価を押し上げており、価格上昇圧力は消費者段階にも波及し始めている。2%の物価目標の達成が視野に入り、上振れリスクも意識されつつある。
  • 金融機関の貸出態度は緩和的な水準を維持しているものの、緩やかな低下傾向にある。一方、銀行の貸出残高は高い伸びが続き、資金需要は底堅い(図2)。
図2:金融機関の貸出態度と民間銀行貸出残高
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出所:日本銀行よりPGIMジャパン作成(2026年9月時点) 注:日銀短観より金融機関の貸出態度DI(「緩い」-「厳しい」)。民間銀行貸出残高は平残前年比
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出所:日本銀行よりPGIMジャパン作成(2026年9月時点) 注:日銀短観より金融機関の貸出態度DI(「緩い」-「厳しい」)。民間銀行貸出残高は平残前年比
内外金融政策見通し
  • 日銀は今後も四半期に1回程度のペースで利上げを続け、2027年前半に政策金利は1.75%に達するとみている。植田総裁は9月会合後の会見で「政策の局面が変化した」と述べた。基調的な物価上昇率が2%を下回るもとで下振れリスクを重く見てきた政策運営を、2%に近づいた今後は上振れリスクにも同等に目を配る運営に改める趣旨であり、従来より短い間隔で緩和度合いの縮小を進める可能性を示唆したものと受け止められる。
  • 政策金利は、日銀の中立金利の推計レンジ(名目1.1~2.5%程度)の下限をわずかに上回った。日銀は金融環境をなお緩和的と評価しているが、物価目標の達成が近づけば緩和的な環境を保つ必要性は薄れ、焦点は現在の金利水準が実体経済に対して緩和的か引き締め的かの評価へ移るとみている。
  • 2026年9月末時点で、市場は2027年3月までに米国で2.5回程度、日本で1.9回程度の利上げを織り込んでいる。内外金利差の拡大で円安が進めば、輸入物価を通じて国内物価が上振れし、日銀の利上げを後押しする要因となる。

 

国内債券市場

 

国債需給見通し
  • 年末にかけての主な財政イベントとしては、消費減税関連法案の国会審議、安保3文書の改定のほか、第2次補正予算の編成の有無がある。最大の注目は12月下旬に公表される2027年度予算案と国債発行計画である。財政懸念は燻りやすい状況が続く。
  • 国債発行の年限短期化を受けて、超長期セクターの需給は改善傾向にある。2025年は生命保険会社の損出し売りなどのフローを受け、特定の年限で局所的な歪みが広がった。本年は解消に向かっているものの、イールドカーブ上の一部の年限では、なお利回りの逆転が残っている(図3)。
図3:超長期セクターのカーブの歪み
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出所:BloombergよりPGIMジャパン作成(2026年9月時点)
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出所:BloombergよりPGIMジャパン作成(2026年9月時点)
国債:2026年7-9月の振り返りと10-12月の見通し
  • 7-9月期は、中東情勢を背景とした原油高とAI投資の拡大を受けて、世界的にインフレ懸念が強まった。欧米の中央銀行は9月に相次いで利上げを実施し、社債の発行増による需給悪化も加わって、世界的に金利が上昇した。
  • 国内でも長期金利は大きく上昇した。利上げペースの加速が織り込まれた一方、超長期ゾーンは比較的底堅く推移し、イールドカーブはベアフラット化した。日銀は9月の金融政策決定会合で0.25%の利上げを決め、政策金利を1.25%とした。6月の利上げから3ヵ月での追加利上げとなった。
  • 10-12月期の国債市場は、当面もみ合いを予想する。
  • 企業業績は堅調で、来年の春闘でも相応の賃上げが見込まれる。財政面では、日本成長戦略や概算要求で積極財政の骨格が明らかになる一方、防衛費の増額幅・ペース・財源をめぐる不透明感が残る。海外では、FRBの利上げ観測で米長期金利が高止まりしており、国内金利にも上昇圧力がかかりやすい。
  • ただし、こうした材料の相当部分は、すでに相場に織り込まれているとみる。市場は2027年3月までに政策金利1.75%程度への上昇を織り込んでおり、利上げの織り込みがここからさらに進む余地は限定的とみる。積極財政を背景に、2027年度のカレンダーベースの市中発行額は増加する可能性が相応にある。もっとも、増額は短期国債や2年~5年債など短い年限が中心となり、超長期債の増額は見送られやすいとみる。短期ゾーンの利上げ織り込みが進んでいること、超長期ゾーンの需給が改善していることから、やや長い目で見ると、中長期ゾーンが相対的に上昇し、イールドカーブが上にやや膨らむ形での緩やかな金利上昇を想定している。
図4:10年国債利回りの推移
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出所:Bloomberg(2026年9月30日時点)
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出所:Bloomberg(2026年9月30日時点)
図5:国債イールドカーブ
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出所:日本相互証券(2026年9月30日時点)
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出所:日本相互証券(2026年9月30日時点)
クレジット:2026年7-9月期の振り返りと10-12月期の見通し
  • 7-9月期の国内社債市場は、日銀の利上げ、財政悪化懸念、米国金利上昇といった複数要因から、金利のボラティリティが高まったものの、絶対利回りの魅力から投資家需要が根強く、総じて底堅く推移した。7月にはイラン情勢の不透明感やハイパースケーラーの巨額の設備投資ニーズによる、大量の社債発行による需給軟化も相まって、海外市場のクレジットスプレッドはやや軟化した。8月はAI・半導体関連銘柄への懸念が緩和方向に向かい、4-6月期企業業績が国内外企業ともに堅調だったことが好感された。一方、金利上昇による損失確定と思われる売りが継続的に見られ、若干需給の重しとなった。9月は日銀の利上げが行われたが、スプレッドへの影響は限定的だった。
図6:対国債スプレッド(bps)
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出所:野村総合研究所(2026年9月30日時点)
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出所:野村総合研究所(2026年9月30日時点)
  • 円建社債の7-9月期の新発債発行額はソフトバンクGの1兆円の個人向け社債を含め6.2兆円となり、前年同期比53%増となった。劣後債では三菱UFJ FGによる銀行AT1債に加え、北海道電力やパナソニック、住友林業などが劣後債を起債したが大幅な需要超過となり、劣後債への需要の強さが確認された。
  • 10-12月期のクレジット相場は、引き続き投資家の利回り志向を背景にした底堅い社債への需要と、日銀の追加利上げと財政拡張リスクを意識した国内金利のボラティリティの綱引きで左右されると思われる。投資家の利回り志向から社債需要は底堅く、緩やかなスプレッド縮小圧力となるだろう。特に、中期ゾーンを中心とした劣後債やスプレッド水準の高い銘柄への需要が相対的に強いと思われる。一方、金利上昇観測により、企業が資金調達の前倒しを行うことも考えられ、シニア債に関しては、スプレッドはやや拡大する可能性がある。また、すでに高値圏にある海外クレジット相場が軟化することがあれば、円クレジット市場に調整がもたらされる可能性はあるだろう。
  • 本邦社債発行体のファンダメンタルズは総じて底堅く推移するとみている。中東情勢の実体経済への波及リスクは後退し、今局面では日本企業の柔軟性が発揮されたと思われる。今後も半導体・AIインフラ需要が製造業の利益回復を牽引していく構図が見込まれ、好業績と堅調なキャッシュフロー創出、適切なレバレッジコントロールを背景に、インフレによる費用増、金利上昇による利払い負担増にも一定の耐性があると期待できる。もちろん、財務バランスの改善を遅らせたり、財務レバレッジの急上昇を伴ったりする、将来成長のための設備投資やM&Aの積極化、資本効率向上のための自社株買いを含む株主還元の拡大には留意が必要である。
図7:年初来トータルリターン
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出所:野村総合研究所(2026年9月30日時点)
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出所:野村総合研究所(2026年9月30日時点)

PGIMJ133180 6022733-20261016